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ID番号 07032
事件名 雇用関係存続確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 日本マーク事件
争点
事案概要  ソフトウエアの作成・開発・販売等を業とする会社で業務マネージャーとして雇用されていた者が言動著しく不良であるとして解雇され、雇用関係存続確認等を求めたケースの控訴審で、原審と同様に解雇無効と認めた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
民法536条2項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
退職 / 定年・再雇用
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / バックペイと中間収入の控除
裁判年月日 1997年10月16日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ネ) 653 
裁判結果 一部変更、一部棄却
出典 労働判例733号81頁
審級関係 一審/東京地/平 8. 1.26/平成5年(ワ)2407号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 被控訴人は、頑固で自己の意見ややり方をなかなか曲げようとせず(前示(4)、(5)、(8)、(12))、いささか自制心に乏しくて激昂しやすい性質を持っており(前示(3)、(6)、(7))、時として独断専行になることもあった(前示(9)、(10))し、社長の悪口をいうこともあった(前示(11))が、他方で、前示のとおり控訴人会社の発展のために努力をしており(前示(14))右独断専行については特に処分等を受けたこともなく(なお、〈証拠略〉によれば、控訴人の就業規則七二条には、従業員に対する処罰(処分)として、譴責から解雇まで七種類が定められている)、悪口についても特段咎め立てしなければならない程のものとも考えられないし、頑固で激昂しやすい性質があってしかも年上であるから、上司であるA社長としては使いにくいマネージャーであったことは十分に推測できるのであるが、だからといって、右のような被控訴人が「就業状況が著しく不良で就業に適しないと認められる」(就業規則一八条七号)ということはできないのである。控訴人の主張する主位的解雇は採用できない。そして、予備的解雇は理由がないことは原判決の説示するとおり(原判決四五頁一〇行目(25頁4段24行目)から四六頁末行(26頁1段18行目)まで)であるから、被控訴人の雇用関係存続確認請求は理由がある。〔中略〕
〔賃金-賃金請求権の発生-バックペイと中間収入の控除〕
 控訴人は、被控訴人が、少なくとも平成五年六月から現在まで、埼玉県川口市所在のマンションの管理人として勤務し、月額給与三〇万一〇〇〇円以上を得ていると主張するところ、(証拠略)によれば、右のとおりの場所で被控訴人が勤務していたことは認められるものの、その収入金額を認めるに足る証拠はない。さらに、控訴人は、被控訴人が、東京地裁平成七年(ヨ)第二一一二八号仮処分申請事件における平成七年七月一九日の第三回審尋期日において、現在働いており、収入は月額一七、八万円(手取り一五、六万円)であると陳述し、右の限度では認めていると主張するところ、(証拠略)によればその主張どおりの事実が認められるのであるが、他方で、被控訴人は当審の平成八年七月三日付準備書面において「現在は働いていない」と主張するところ、本訴において被控訴人は一貫して右稼働の期間や収入等を明らかにしようとしないので、収入額や収入のあった期間が明らかではないのであるが、右証拠や主張態度等から、被控訴人の稼働期間は、(証拠略)の基となった調査がされた平成七年一月一日から訴訟が当審に係属する直前の平成八年一月末日まで、賃金額は控え目にみて月額一五万円と認定して計算すると、原審口頭弁論終結の日の直前である平成七年六月末日までの賃金合計額二四四一万五三六〇円から九〇万円(月額一五万円の六ヶ月分)を控除した二三五一万五三六〇円、平成七年七月一日から平成八年一月末日までは月額七六万二九八〇円から一五万円を控除した月額六一万二九八〇円の割合による金員、平成八年二月一日から本件判決確定の日までは月額七六万二九八〇円の割合による金員を、毎月二五日限り支払うことを命じるのが相当である。そうすると、控訴人の控訴は、右九〇万円及び平成七年七月一日から平成八年一月末日まで被控訴人の請求額から月額一五万円の割合による金員の控除を求める限度で理由がある。〔中略〕
〔退職-定年・再雇用〕
 控訴人は、被控訴人は、昭和一四年三月二〇日生まれで、平成一一年三月二〇日で満六〇歳に達し、同日をもって定年により雇用契約が終了するから、被控訴人に対し、定年退職日の翌日以降の賃金を支払う義務はないと主張し、被控訴人の年齢及び定年を迎える時期については当事者間に争いがないところ、右控訴人の主張については、被控訴人は、本訴において、控訴人の従業員たる地位を有することを前提に賃金請求をしていたことは明らかであり、当審に至って被控訴人の定年が迫ってきて、本訴提起段階では明確ではなかったが当然の前提とされていたものが具体的に浮かび上がってきたので、控訴人がこのような主張をしたものであるから、当裁判所は、これを認め、原判決主文第二項記載の「本判決確定の日に至るまで」を「本判決確定の日又は平成一一年三月二〇日のいずれか早い日までの間」と変更することとする。