ID番号 | : | 07051 |
事件名 | : | 賃金等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 光洋精工事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | ベアリング等の製造販売を営む会社で雇用されていた従業員が、職能資格制度の導入で九級に格付けされ、その後八級に進級しそのまま退職となったことにつき、会社が人事考課についての裁量権を濫用した違法がある等として、正当な人事考課がなされていた場合との賃金・退職金との差額等を請求したケースの控訴審の事例(原審と同様に棄却)。 |
参照法条 | : | 労働基準法3章 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額 |
裁判年月日 | : | 1997年11月25日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成9年 (ネ) 1276 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例729号39頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕 人事考課は、労働者の保有する労働能力(個々の業務に関する知識、技能、経験)、実際の業務の成績(仕事の正確さ、達成度)、その他の多種の要素を総合判断するもので、その評価も一義的に定量判断が可能なわけではないため、裁量が大きく働くものであり、組合間差別の不当労働行為のように大量観察を行うことにより有意の較差が存在することによって人事考課に違法な点があることを推認できる場合は別として、個々の労働者についてこれを適確に立証するのは著しく困難な面があることはいうまでもない。さらに、本件において控訴人の主張する人事考課の違法は、昭和五七年一〇月一日の一般職員への職能資格給導入時点に遡り、平成七年の退職時までの長期間にわたるもので、前記の人事考課の性質からいって、個々の人事考課がなされた根拠を後日明らかにするのはかなりの困難を伴うものであるし(人事考課担当者の証言が多少曖昧であったとしても、前記の人事考課の性質からいえばやむを得ないことであって、このことから直ちに人事考課が不当になされたと認められるものではない。)、他方、当時自分は成績優秀であったと人事考課の対象であった労働者が述べても、それ自体の証拠価値は極めて乏しいといわざるを得ない場合が多いのであって、人事考課の適否を巡る立証には難しい点があることは否定できない。しかし、いずれにしても、人事考課をするに当たり、評価の前提となった事実について誤認があるとか、動機において不当なものがあったとか、重要視すべき事項を殊更に無視し、それほど重要でもない事項を強調するとか等により、評価が合理性を欠き、社会通念上著しく妥当を欠くと認められない限り、これを違法とすることはできないというべきであるが、本件においては、各証拠によるもこれらの事情が存在したと認めることはできない。 |