ID番号 | : | 07073 |
事件名 | : | 退職慰労金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ユタカ精機ほか事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 従業員から取締役に就任していた者が、取締役を解任され、退職金を請求したが、昭和四三年までの従業員としての退職金を取締役退任時の平成六年に受領するにあたり、当然に物価・賃金水準の上昇に応じた調整をすべきであるとして調整をした退職金を請求するとともに、取締役としての退職慰労金も合わせて請求した事例(一部認容、一部棄却)。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条 労働基準法3章 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職慰労金 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 |
裁判年月日 | : | 1998年1月28日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (ワ) 6079 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例732号27頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 原告Xは、昭和四三年に支給されるべき右退職金を、平成六年一二月に受領することとなるところ、昭和四三年当時と、平成六年一二月当時とは、物価・賃金水準に大きな開きがあるので、当然、右物価・賃金水準の上昇率に応じた手直しがされるべきであるのであり、その手直しとして、右金額に対し、年五分の複利計算がされるべきであると主張する。しかし、たとえそうであるとしても、当然に、右物価・賃金水準に応じた調整をすることができると解すべき根拠を欠くというべきである。 4 以上によれば、原告Xの、被告精機に対する退職金請求権は、二九万三一五二円の限度で理由がある。〔中略〕 〔賃金-退職金-退職慰労金〕 株式会社が取締役に対して支給する退職慰労金は、取締役の報酬として、商法二六九条の規制が及び、定款に規定し、又は株主総会で決議した場合に限り、請求できるものと解すべきである。 2 請求原因3(三)(1)のうち、被告精機には退職慰労金規程が存在する(なお、〈証拠略〉によれば、被告精機の役員の退職慰労金は、役員退職慰労金規程四条、五条に基づいて計算し、取締役会又は監査役の協議において決定のうえ、株主総会において承認された額、又は、右規程に基づき計算すべき旨の株主総会の決議に従い、取締役会又は監査役の協議において決定した額の範囲内とする旨規定されている。)が、被告精密には退職慰労金規程が存在しないこと、被告両社とも、株主総会において原告Xに対する退職慰労金の支給に関する決議をしていないことは、当事者間に争いがない。 この点、原告Xは、退職慰労金の支給に関する株主総会決議が存在しなくとも被告両社に退職慰労金を請求できる根拠として、被告両社が現在に至るまで株主総会を開催していないこと、それにもかかわらず被告両社はAに対して退職慰労金を支給したこと、原告Xは被告両社のために精勤してきたこと、被告精機には退職慰労金規程が存在し、被告精密には右規程により退職慰労金を支給する慣行が成立していたので、いずれもお手盛りの危険性がないことを理由として、被告両社に対し、退職慰労金を請求するが、たとえそうであるとしても、被告両社の定款に具体的な定めがなく、また、被告両社とも、株主総会において原告Xに対する退職慰労金の支給に関する決議(及び株主総会の取締役会に退職慰労金の決定を委ねる旨の決議に基づく取締役会による右退職慰労金額の決定)が存在しない以上、原告Xの被告両社に対する退職慰労金請求は根拠を欠くというべきである。 |