ID番号 | : | 07077 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 平和自動車交通事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | タクシー会社乗務員が、営業成績が悪く、ハンドル時間不足で賃金を減額される措置をとられた後も反省・是正せず、会社の運行管理に従わない態度を明らかにしたとして、就業規則に基づき諭旨解雇され、地位保全の仮処分を申し立てた事例(認容、一部却下)。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 労働基準法3章 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 二重処分 賃金(民事) / 賃金・退職年金と争訟 |
裁判年月日 | : | 1998年2月6日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成9年 (ヨ) 21227 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部却下 |
出典 | : | 労働判例735号47頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-二重処分〕 債務者は、就業規則八一条一号において、従業員が譴責、減給、降格、乗務停止又は出勤停止(以下「出勤停止等」という。)の処分を受けたにもかかわらず改悛の見込みがないときは諭旨解雇又は懲戒解雇に処する旨を定めている。しかしながら、懲戒処分は、使用者が労働者のした企業秩序違反行為に対してする一種の制裁罰であるから、一事不再理の法理は就業規則の懲戒条項にも該当し、過去にある懲戒処分の対象となった行為について重ねて懲戒することはできないし、過去に懲戒処分の対象となった行為について反省の態度が見受けられないことだけを理由として懲戒することもできない。債務者の就業規則八一条一号の定めは、以上の理解を前提とする限りにおいて効力を有するというべきであり、具体的には、過去に出勤停止等の処分を受けたことがあるにもかかわらず、新たに出勤停止等の事由となる非違行為を犯し、もはや改悛の見込みがないと認められる場合に、右の新たに犯した非違行為についてより重い懲戒処分である諭旨解雇又は懲戒解雇に付することを規定したものと解するのが相当である。したがって、就業規則八一条一号に該当する事由があるというためには、過去に出勤停止等の処分を受け、もはや改悛の見込みがないというだけでは足りず、債務者の主張に即していえば、就業規則八〇条三号に該当する事由が存在することを要する。〔中略〕 〔賃金-賃金・退職年金と争訟〕 平成一〇年二月分以降の賃金債権の存否について判断する。最後の出勤停止の期間は平成九年一〇月一二日から二九日までであり(〈証拠略〉)、出勤停止の期間が延長されたとしても全体で二〇労働日を超えることは許されない(前提となる事実5)から、仮に右の出勤停止の処分が有効であったとしても、遅くとも同年一一月中には出勤停止の期間は経過している。したがって、少なくとも平成一〇年二月分以降の賃金債権の存在は認められる。〔中略〕 債権者は、タクシー乗務員の職務の性質上、長期間にわたって乗務しなければ本訴に勝訴しても原職復帰が難しく、復帰までの訓練期間が必要となるなど不利益を生じる、乗務できないことはそれ自体精神的苦痛である、解雇によって組合活動上不利益を受けており、これは本訴遂行上の不利益となる旨主張する。しかし、地位保全の仮処分は、賃金を生活の資としている労働者が解雇によって被る著しい生活上の危険を防ぐことを目的とするものであるから、賃金仮払仮処分によって賃金債権が保全され、差し迫った生活の危険を回避することが可能となった以上、債権者の右主張を考慮しても、地位保全の仮処分まで命ずべき必要性は認められない。 |