ID番号 | : | 07087 |
事件名 | : | 雇用関係存続確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 七福交通事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 旅客自動車運送業を営む会社でタクシー運転者として勤務する者で組合の支部の執行委員の地位にあった者が、乗務員の有給休暇手当をめぐる労使紛争に関連して、時限スト、連日のマイクによる門前宣伝活動、営業車両の前ドアなどに組合の主張を書いたステッカーを貼付するなどの活動を行い、ステッカーを剥がそうとした総務部長に体当たりして転倒させ全治一週間の傷害を負わせたことを理由に懲戒解雇され、その無効を主張して争った事例(請求棄却)。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 労働組合法8条 労働組合法7条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1998年3月3日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (ワ) 19266 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例738号38頁/労経速報1666号18頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕 被告の原告に対する本件懲戒解雇の事由であるA部長に対する暴行・傷害の事実は存在し、これは被告の就業規則七四条二六号に定める「業務上他人に対して暴行、脅迫を加え、または業務を妨害して職務の遂行を不能にしたとき」に該当するといわざるを得ない。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 原告は、本件懲戒解雇は原告の行為の程度と比較して均衡を失するなど解雇権の濫用である旨主張する。 確かに、原告のA部長に対する暴行は、前記認定のとおり、勢い余って衝突したという感じの行為であり、予め企図されたものではなく、いわば偶発的な出来事というべきであって、行為の態様において必ずしも悪質であるとはいいがたい。しかしながら、亀戸支部がボディステッカー闘争として行った営業車両へのステッカー(ビラ)の貼付行為は、物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動にあたらないことはもとより(最高裁判所第三小法廷昭和五四年一〇月三〇日判決・民集三三巻六号六四七頁参照)、ビラの態様や記載内容等に照らして、タクシーを利用しようとする客に不快感や不安感を抱かせ、その利用を思い止まらせるなど、被告の営業を妨害するおそれがあるとともに、臨時措置法四五条によって表示を義務づけられた表示事項を覆い隠す点で、同法に違反するとの批判も免れがたいこと(現に、被告はタクシー近代化センターからその指摘を受けている。)、原告の暴行行為は、このような違法な状態を除去するため、自らビラを剥がそうとしたA部長の業務に対して向けられたもので、被告の正当な業務の執行を妨害するものであること、原告は、負傷したA部長が救急車で運び出される際、原告の暴行によりそのような事態が現出したにもかかわらず、「A部長は公傷で怪我をしました。」などと揶揄し、その後の被告からの事情聴取に対しても暴行の事実を一貫して否定するなど、反省する態度を全く示していないことなど、先に認定した諸事情を併せ考慮すれば、本件懲戒解雇が原告の非違行為の程度と比較して均衡を失するほど著しく重いということはいえないし、未だ本件懲戒解雇をもって解雇権の濫用であるとはいえず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 本件懲戒解雇の事由とされた暴行・傷害の事実が現に存在し、本件に顕れた諸般の事情に照らして本件懲戒解雇をもって解雇権の濫用とはいえないのであり、原告の亀戸支部における活動状況等から直ちに、被告が原告を排除して組合活動の弱体化を図ろうとしたとか、原告の組合活動を理由とする不利益取扱いであると認めることはできず、他に本件懲戒解雇が労働組合法七条所定の不当労働行為に該当すると認めるに足りる証拠はない。 |