ID番号 | : | 07088 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | シンワ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 勤務状況不良あるいは周囲の人間とのコミュニケーション不足等を理由とする解雇につき、その一つ一つを個別に取り上げる限り必ずしも重大な不都合とはいえないものの、就業規則の解雇事由に該当し、また解雇権の濫用にも当たらないとして、右解雇が有効とされた事例。; 就業規則の意見聴取につき、資格を欠く者の意見書が添付されているが、そのことから直ちに就業規則の効力を失わせるものではないとされた事例。; 賞与の支払につき、労働者がその減額に応じて承諾しない限り、使用者による賞与の減額は許されないとされた事例。 |
参照法条 | : | 民法1条3項 民法414条 労働基準法2章 労働基準法24条 労働基準法90条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権 就業規則(民事) / 意見聴取 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 解雇(民事) / 解雇事由 / 協調性の欠如 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1998年3月3日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成8年 (ワ) 21995 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労経速報1666号23頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 〔解雇-解雇事由-協調性の欠如〕 2 右に認定した原告の行状の数々は、その一つ一つを個別に取り上げる限り必ずしも重大な不都合とはいえないものの、これを全体として見た場合、組織として活動している会社にとって決して看過することのできない事柄であるというべく、これは、被告の就業規則一七条三号所定の「仕事の能力が甚だしく劣るか、又は甚だしく職務に怠慢で担当業務をはたし得ないと認めたとき」に該当するか、少なくとも同条六号の「その他前各号に準ずる程度のやむを得ない事由があるとき」に該当するというべきである。 もっとも、原告の担当業務の中核をなす品質管理の分野においては、被告もその後顧問契約を締結してその専門的知識による貢献を期待していたように、原告は十分その職責を果たし得たことが窺われるけれども、それも組織においては他の人間とのかかわり合いのなかで所期の目的が達成できる筋合いである以上、被告が原告について従業員としての適格性に疑問を抱いたとしても無理からぬものがあるといえよう。したがって、このような事情も右の判断を左右するものではない。 〔解雇-解雇権の濫用〕 3 そして、原告はいきなり被告の品質統轄部長として採用されたものであること、被告は原告に対し、その行状を改めるよう一定の猶予期間を設けて注意を促し、改善されない場合の措置についても予め告知して警告を発していること、本件解雇の意思表示をする際には、同時に顧問契約締結の提案も行っており、原告もこれを前向きに受けとめていたことなど、先に認定した原告の雇用及び本件解雇に至る経緯からすれば、本件解雇をもって解雇権の濫用ということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 〔就業規則-意見聴取〕 4 なお、原告は、被告の就業規則は、従業員の代表としての資格を欠く者の意見書を添付して届け出られており、労働基準法九〇条に違反して無効である旨主張するが、従業員の意見の聴取手続について同条の規定に違反するとしても、そのことから直ちに就業規則の効力を失わせるものではないと解すべきであるから、原告の右主張は採用できない。〔中略〕 〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕 二 平成七年冬季賞与の請求について (書証略)及び原告本人尋問の結果によれば、原告が被告に雇用されるに際し、原、被告間に、原告の年間賞与について基本給と役付手当の合計額の四・五か月分(夏二か月分、冬二・五か月分)を支給する旨の合意が成立したことが認められる。 ところが、(証拠略)によれば、被告は、平成七年冬季の賞与について、会社の業績等に鑑み平均支給率を二か月分と決定し、これを基準として各従業員の勤務評価に従い、プラス・マイナス〇・四か月分の範囲で査定した結果、原告に対しては、一・六か月分の九七万六〇〇〇円が同年一二月八日に支給されたことが認められる。しかしながら、原告が被告に雇用されるに際して年間賞与について一定月分を支給するという合意が成立したことは、右に認定したとおりであるところ、被告が原告に対し、右の合意にかかわらず、賞与は会社の業績や従業員の勤務成績等に応じて増減するものであることを予め周知させていたことの主張、立証はないから、原告がその減額に応じて承諾しない以上、被告の一方的な取扱いにより当然に減額されるものではないといわざるを得ない。 そして、原告の当時の基本給が四九万九八〇〇円、役付手当が一一万円であったことは、当事者間に争いがなく、その合計額六〇万九八〇〇円の二・五か月分は一五二万四五〇〇円となり、これから既払額九七万六〇〇〇円を控除した残額五四万八五〇〇円の支払を求める原告の請求は理由がある。 |