ID番号 | : | 07093 |
事件名 | : | 損害賠償請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 西日本ジェイアールバス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | バス運転手として西日本JRバス会社に勤務する者が、二年間に時季指定した年休行使を不法に妨げられ、また、そのうち七日分については年休を取得する権利を失効させられたと主張して、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求した事例(原審と同様に請求を認容、会社側の控訴棄却)。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 時季指定権 / 指定の方法 年休(民事) / 時季変更権 年休(民事) / 年休権の喪失と損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1998年3月16日 |
裁判所名 | : | 名古屋高金沢支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成8年 (ネ) 69 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例738号32頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年休-時季指定権-指定の方法〕 控訴人は、被控訴人が口頭で平成元年一一月一七日分の時季指定を行ったことを裏付ける証拠は全くないのであるから、被控訴人の供述は信用することができず、同日分の時季指定は存在しないと主張するが、被控訴人の供述の内容は前記(原判決判示)のとおり一貫していて、特に不自然な点はなく、しかもその信用性を疑わせるような証拠もないから、控訴人の主張は理由がない。なお、予定勤務割表上の同日の欄には時季指定等に関する何らの記載がないことが認められるが、証拠(原審証人〈人証略〉)によれば、控訴人会社においては当時、口頭で時季指定がなされた場合であっても、控訴人が時季変更権を行使した場合には何らの記載がなされない扱いをしていたことが認められ、このことからすると、右記載がないからといって被控訴人の供述が信用性に欠けるというものでもない。」〔中略〕 〔年休-時季変更権〕 控訴人は、控訴人会社においては労働者の側も、不就業という点では年休と同様の結果が得られ、その分だけ年休を残すことができることを考慮して、代休を付与すべき者から年休の付与の請求があった場合には原則として代休を付与するという控訴人会社の取扱いを是認していたのであるから、代休が付与されるならばあえて年休の時季指定を維持しないというのが労働者の一般的な意思であったのであり、被控訴人も右同様の意思(少なくとも、代休が付与されるのであれば、控訴人の時季変更権の行使は争わない意思)を有していた旨主張する。しかしながら、被控訴人自身が右のような意思を有していたことを窺わせる証拠がない上、証拠(〈証拠略〉、原審及び当審における被控訴人本人)によれば、被控訴人にとって代休を付与された場合より年休を取得するほうが収入面でも有利であった(年休を取得した方が代休の場合より祝日手当の関係で給与が多く支給されることになる。)ことが認められ、被控訴人の当時の年休取得状況(時季指定しても控訴人から時季変更権を行使されることが多く、完全に消化することが確実といえる状況ではなかったこと)等も併せ考慮すると、被控訴人が代休を付与されるならばあえて年休の時季指定を維持しないとか、控訴人の時季変更権の行使は争わないとかいう意思を有していたとは考え難く、控訴人の主張は理由がない。〔中略〕 〔年休-年休権の喪失と損害賠償〕 被控訴人の時季指定にかかる年休の取得を合計三五日間にわたって侵害したことは労働契約上の債務不履行にあたるというべきであり、右三五日のうち年休の失効した七日分を除く二八日分についても、控訴人の右侵害行為により被控訴人が精神的苦痛を被ったことは明らかであり、前記(本判決3)認定の被控訴人の勤務環境や職務の性質等を考慮すれば、被控訴人が控訴人の時季変更権の行使に対し強く異議を述べることなく就業したことをもって被控訴人に対し不利益に重視することは相当でなく、控訴人の主張は理由がない。 |