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ID番号 07096
事件名 懲戒免職処分取消請求事件
いわゆる事件名 中国郵政局長事件
争点
事案概要  郵便局職員が、加入者から集金した簡易保険の保険料の団体割引額を、自らが関与する簡易保険の払込み団体の通帳に、同団体の運営費に費消する目的で入金した行為が横領に当たるとして懲戒免職処分を受け、その右懲戒免職処分の違法を主張してその効力を争った事例(棄却)。
参照法条 国家公務員法82条
国家公務員法74条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の根拠
裁判年月日 1998年3月18日
裁判所名 広島地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (行ウ) 12 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例743号37頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の根拠〕
 (一) 国家公務員につき懲戒事由がある場合において、懲戒権者が懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかは、その判断が、懲戒事由に該当すると認められる行為の性質、態様等の他、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、広範な事情を総合してされるべきものである以上、平素から局内の事情に通暁し、部下職員の指揮監督の衝に当たる懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきであり、懲戒権者が右の裁量権を行使してした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである(昭和五二年一二月二〇日最高裁判所第三小法廷判決(民集三一巻七号一一〇一頁)及び同日同小法廷判決(民集三一巻七号一二二五頁)参照)。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 (二) 原告のように郵便局の局舎外において外務事務に従事する職員は、管理者の直接の監督を離れ、自らの判断と責任において独立して担当事務を処理するのであるから、右のような職務の特質から見て自己の保管する金銭に対する厳正な取扱いが要求されるところ、右のような金銭に対する廉潔性、潔白性の要請に反する金銭的不法行為は、郵政事業利用者に損害を与えることはもとより、郵政官職の信用を傷つけ、国民の郵政事業に対する信用をも損ない、事業運営を阻害する公務秩序びん乱行為とみなさざるを得ないものであって、職員が公金を横領するなどの不正領得行為をした場合、当該職員が、その領得金額の多寡、損害填補の有無、刑法上の可罰性のいかんにかかわらず、厳正な措置をもって処断されることはやむを得ないものというべきである。
 本件についてこれをみると、前示のとおり、原告は昭和六〇年八月当時、郵便局に勤務すること一五年余りに及び、公金取扱いの重要性を十分認識していたにもかかわらず、違法行為を長期間継続して繰り返したものであり、また、原告のなした保険料の団体割引額の横領行為は、集金保険料と団体保険料の差額に目をつけ横領するという、自己の職務上の立場を悪用したものであって、自らが管理運営する囲碁を行事内容とした払込団体(A会)の活動費として流用したものであって、公務秩序を維持する上からも許容されるものではなく、その責任は極めて重いというべきである。