ID番号 | : | 07099 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 関西フェルトファブリック(本訴)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | フェルトの製造・加工・販売を業とする会社の営業所の前営業所長であった者が、その在任中に経理担当社員の多額にわたる金銭横領行為を知りながら、その社員と右横領金で多数回飲食をともにし、不良債権の入金を偽装工作したとして懲戒解雇され、その無効を主張して争った事例(請求棄却)。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 労働基準法20条1項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 部下の監督責任 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続 解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力 |
裁判年月日 | : | 1998年3月23日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成8年 (ワ) 3663 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例736号39頁/労経速報1666号9頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-部下の監督責任〕 原告がAの横領行為に積極的に加担ないし関与した(抗弁1(二)(1))とまでは断定できないものの(なお、前記のB会社及びC会社の未払金並びに前借金の返済に関する原告の行為は、横領に関わる行為というよりは、不良債権の発覚を恐れてした行為であると認められる。)、Aが経理手続を一手に握っている以上、原告が健全な常識を働かせればAの行為に不審の念を抱き、同人が被告の金員を横領していることを容易に知り得る状況にあったということができる。そして、原告が広島営業所の営業所長(ないし所長代理)として経理関係書類をチェックしていれば容易にAの横領行為を発見できたのであり、とりわけ日計表と現金預金残高を確認照合するなどしさえすればAの横領行為をたやすく発見し得たにもかかわらず、原告が経理内容のチェックを著しく怠ったため、Aの横領行為の発見が遅れ、その結果、被告の被害額を著しく増大させたということができる。 よって、原告の右所為は、被告就業規則六三条七号に規定する「重大な過失により会社に損害を与えたとき」に該当するものということができるので、本件解雇は有効である。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-部下の監督責任〕 原告が広島営業所(とりわけ所長代理及び所長)在任中にAの横領額が目立って増加していること、Aが原告と飲食をともにするなどし、D所長をはじめ歴代の営業所長に比して原告と長時間密接に行動をともにしていたにもかかわらず、かえって原告による経理上のチェックが全くされなかったことからAの横領行為を助長したふしがあることなどが認められるであって、これらによれば、原告の義務違反の程度は決して軽視できないものを含むばかりか、原告が月二〇万円程度の給与しかもらっていないAに対し、歓送迎会の二次会費用をはじめ、「味処藤」での飲食費や取引先の未払金等さまざまな場面で数万円から数十万円もの金額の立替払いをさせておきながら、その精算を全く申し出ることなく漫然これを放置し、又はAが右のごとき大金を立て替えることにつきほとんど何らの疑問を呈することがなかったことなど前記認定事実をも加味すれば、原告の義務違反の内容は重大な過失とはいえほとんど故意に近い程度のものといって差し支えないものであり、その点からも特に本件解雇が懲戒処分として重きに失するものとはいえず、したがって、本件解雇が懲戒権の濫用として無効であるとの原告の主張は理由がない。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕 前記認定事実並びに証拠(〈証拠・人証略〉)及び弁論の全趣旨によれば、被告が本件解雇に当たり、平成七年五月二二日及び同年六月二一日の合計二回にわたって、原告に対し、事前の事情聴取の機会を設けたこと、その際、原告はEらからAの横領への関与の有無につき詰問調で質問を受けたものの、Aの横領を知りつつ関与したものではない旨答えて、終始Aの横領への関与を否認していたことが認められるところ、右Eらによる事情聴取がある程度詰問調であったとしても、横領という不祥事の真相解明のためには事の性質上ある程度まではやむを得ないと考えられるのであって、原告自身Aの横領への関与の事実を否認し続けていたことなどに照らしても、特に強制にわたっていたとは認められず、手続的に適正を欠くものではなかったと認められる。〔中略〕 〔解雇-労基法20条違反の解雇の効力〕 解雇予告手当の支払なき解雇は即時解雇としては効力を有しないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でないときは、解雇から三〇日の経過又は三〇日分の給与相当額が支払われたときに解雇としての効力が発生すると解されるところ、本件において被告は必ずしも即時解雇に固執する趣旨ではないと認められるので、本件解雇から三〇日が経過した平成七年七月二一日に懲戒解雇としての効力が発生するものと解される(この点、原告が主張するように、本件解雇自体が予告手当不払いの故に当然に無効であるということはできない。)。 |