ID番号 | : | 07100 |
事件名 | : | 労働契約に基づく地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 学校法人小樽双葉学園事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 脳卒中で倒れて半身不随になり入院治療を受けていた私立高校の保健体育の教師が、就業規則に定める解雇事由の「身体の障害により業務に堪えられないとき」に該当するとして解雇され、その解雇の効力を争った事例(認容)。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 民法1条3項 労働基準法3章 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 就労不能 解雇(民事) / 解雇権の濫用 賃金(民事) / 賃金・退職年金と争訟 |
裁判年月日 | : | 1998年3月24日 |
裁判所名 | : | 札幌地小樽支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (ワ) 150 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | 労働判例738号26頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇権の濫用〕 〔解雇-解雇事由-就労不能〕 被告高校においては、教員が種々の校務を分掌しているほか、業務として担任業務、委員会活動、日直等を行う必要があることは認められるものの、原告がこれらの業務を行うことができないと認めるに足りる証拠はなく、これらの業務があることから直ちに原告が業務に堪えられないと認められるものではない。また、仮に原告の身体状況から一部担当することが困難な業務があるとしても、一般に、複数の職員で業務を行う場合には、各人が各業務をまんべんなく担当しなければならないものではなく、得手不得手等の様々な要因から、各人の担当する業務に軽重を持たせ、不得手な業務を少なく(あるいは免除)し、適した業務をより多く分担させることが考えられ、あるいは実際に行われているところであり、本件においても、被告の方で適切な業務配分をすることにより、原告も右の業務を分担することが可能であると考えられる。しかるに、証拠上被告が右の点を検討した事実は認められないし、適切な業務配分が困難であることを認めるに足りる証拠もない。そうすると、授業以外の業務の存在の点も原告が被告高校の教員として業務に堪えられないことを基礎づける事情としては不十分であるというべきである。 また、原告の歩行能力からすれば、時間内における教室間の移動についても可能であると認められ、少なくとも、原告が休み時間内に教室間の移動を終えることが困難であることを認めるに足りる証拠は存在しない。 (三) また、原告の身体状況が被告高校の「業務に堪えられない」といえるか否かを判断するにあたっては、原告の前記障害によって生じうるマイナス面のみならず、様々な観点からの総合的考慮が必要となるところ、原告が前記のような障害を負っているにもかかわらず、これを克服するために懸命に努力し、業務を遂行している姿を示すことは、生徒の人格形成、発展に好影響を及ぼすなどの教育的効果も期待できるのであるから、右の点を判断するにあたっては、この点も十分に考慮に入れるべきである。そして、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告は、前記障害を克服し、教諭として復帰するため、本件解雇時までの間も懸命な努力を続けてきたことが認められる。 (四) 以上によれば、原告の本件解雇時における身体状況が被告就業規則第一〇条第一号の「身体の障害により業務に堪えられない」場合に該当すると認めることはできず、他に原告の身体状況が被告高校の業務に堪えられないと認めるに足りる証拠はない。 したがって、原告の身体状況が被告就業規則第一〇条一号の「身体の障害により業務に堪えられない」場合に該当するとしてなされた本件解雇は無効である。 〔賃金-賃金・退職年金と争訟〕 原告の本訴請求は、本件口頭弁論終結後、本判決確定までの将来の給付を求める訴えを含むが、被告は、これまで一貫して、本件解雇は有効であり、原告に対する賃金支払義務はない旨主張しており、本判決確定前の任意の履行は期待できないから、右の請求についてもあらかじめ請求をする必要があると認められる。 |