ID番号 | : | 07117 |
事件名 | : | 訓告処分取消等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 神奈川県教育委員会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 公立学校教員が入学式において校庭の国旗掲揚ポールの日の丸を引きずり下ろしたことを理由とする文書訓告処分につき、右処分は適法とされた事例。 |
参照法条 | : | 教育公務員特例法3条 地方教育行政の組織及び運営に関する法律35条 地方公務員法33条 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 信用失墜 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続 |
裁判年月日 | : | 1998年4月14日 |
裁判所名 | : | 横浜地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成6年 (行ウ) 16 |
裁判結果 | : | 一部棄却、一部却下(確定) |
出典 | : | 労働判例744号44頁/判例地方自治182号67頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-信用失墜〕 A校長が自らの権限と責任の下に日の丸を掲揚したことについて何らの違法も存しないことは前記のとおりであって、このことは過去の経緯に鑑みても同様であるから、原告らの右主張は採用することができない。 6 そして、A校長は、右に述べたとおり、国旗を掲揚する権限と責任に基づき日の丸(以下、国旗という。)を掲揚する旨決定し、校務としてこれを実施したのであるから、その行為は校務として適法な職務遂行行為というべきであって、その指揮監督下にある原告らが右の校務を妨げてはならないのは当然である。しかも、本件においては、A校長の前任者であるB校長が、平成五年三月八日の職員会議終了直後に原告ら三名を含む教員に対し、卒業式及び入学式に国旗を掲揚する旨述べており、その後A校長も同年四月一日、原告ら三名に対して「あなた方が何らかの意思表示をすることについては、これを認めますが、教育公務員としての自覚に基づいて、それにふさわしい行動をすることを望みます。」と述べて指導していることが認められるのであるから、原告らが単に国旗の掲揚に反対するとの意思を表明するのであればともかく、これにとどまらず、A校長がC事務長及びD副主幹をして掲揚させた国旗を実力をもって引き降ろし、国旗が掲揚されていない状態を作出して、国旗の掲揚を妨害する行動に及ぶことまでが許されるということはできない。 したがって、原告らの本件行為は、許される限度を超えているものと評価せざるを得ず、公立学校教員としての職の信用を傷つけ、かつ、その職全体の不名誉となる行為というべきであり、教育公務員特例法三条、地方教育行政法三五条、地公法三三条に違反するものといわざるを得ない。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 五 争点5(裁量権の濫用の有無)について 本件行為は、校長が自らの権限と責任に基づいて遂行した職務行為につき、原告らがそのことを認識し、かつ校長及び教頭から、それぞれ「あなた方が何らかの意思表示をすることについては、これを認めますが、教育公務員としての自覚に基づいて、それにふさわしい行動をすることを望みます。」、「入学式当日決して実力行動に出ることは慎むように。」等と事前に指導されていたにもかかわらず、意を通じて国旗を引き降ろすことを計画の上、年次有給休暇を取得し、実際に国旗を引き下ろす行為に及んでこれを妨害したというものであって、その職務上の義務違反の態様は重いといわざるを得ないのであって、本件において取り調べた証拠を総合しても、被告教育委員会が本件各訓告の措置をとったことにつき、裁量権の濫用があったと認むべき事情を認めるに足りる証拠はない。この点に関する原告らの主張は採用することができない。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕 六 争点6(手続上の違法性の有無)について 原告らは、本件各訓告の手続において、原告らに対する告知、弁明、聴聞の機会が付与されなかったことからその手続に瑕疵があると主張する。 しかし、本件各訓告は原告らの法的地位に変動を生じさせる不利益な処分ということはできないから、その手続に当たって告知、弁明、聴聞の機会が付与されることは必ずしも必要とは解されないし、本件においては、原告らに対して事情聴取の手続が履践され、原告らも本件行為について当日の事実関係を認めた上、自らの主張を述べているのであるから、告知、弁明、聴聞の機会が与えられていないとはいえない。原告らのこの点に関する主張は採用することができない。 |