ID番号 | : | 07119 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本国際酪農連盟事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 社団法人の事務局長が出金の根拠のない不正支出をしたこと、及び副会長に対する名誉を傷付ける内容の書簡を会員に配布したことを理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損 |
裁判年月日 | : | 1998年4月22日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (ワ) 11493 平成4年 (ワ) 16092 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例746号59頁/労経速報1672号8頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕 (1) 本件各出金は、いずれも被告の規定に基づかない根拠のない出金で、会計処理規程一四条三項、二四条一項所定の手続に違反し、組織規程四条、会計処理規程六条一項、二四条二項の規定を無視して行われたものである。本件各出金は、昭和六〇年から平成三年までの六年間、被告から原告に合計一六一九万四八〇〇円が支出されたものであるところ、原告がかように長期間にわたり、多額の不正支出を行い得た理由としては、職員の福利厚生団体としてどこにでもありがちで、名前が表面化しても不信の念を抱かれにくい共済会という名称を付した実体のないものを介在させて出金を行ったことの他、科目を流用した伝票を多く用いていたために、一見しただけでは不正が判明しにくかったこと、監事による会計監査の際、原告は自ら監事やその補助者に説明を行ったり、部下職員の石栗に監事から質問された際における答弁の仕方を指導し、そのとおり答えさせることによって、不正が判明するのを逃れていたこと(以上の事実については、〈証拠・人証略〉により認められる。)が挙げられるのであり、以上の本件各出金における出金額、出金期間、出金の態様等に徴すれば、原告による本件各出金の違法性は強度であると認められる。そして、本件各出金によって被告の会計秩序及び職場全体の秩序が著しく乱されたことは明らかである。 以上からすれば、原告の行為は就業規則一一条一項三号、三二条一項一号に該当することが認められる。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-会社中傷・名誉毀損〕 (三) A副会長が出張旅費の二重取得をしたとの事実を、本件書簡をB株式会社会長C、D株式会社社長E及びF株式会社監査役Gにそれぞれ送付することにより告知した原告の行為が、被告の体面を汚すものであるか否かを検討する。 原告が本件書簡を送付した相手方は、いずれも被告の団体会員の幹部役員で被告にとって重要な人物である。また本件記載は、伝聞の形がとられているが、読み手にとっては、A副会長による出張旅費の二重取得の事実があたかも存在し、しかもその事実が公的機関である会計検査院において確認されたの如き印象を与える内容となっており、A副会長の名誉を傷つけるものでもある。思うに、原告は、昭和五八年八月から平成二年一二月まで七年間の長期間にわたり被告の事務局長という要職にあって、これまで多くの国際会議に出席する等数々の重要な仕事に携わってきており(右の事実は、〈証拠略〉及び原告本人尋問の結果により認められる。)、本件書簡を送付した当時は事務局長の地位にはないものの、被告に在籍していたものである。したがって、本件書簡送付先を含む被告関係者が、原告を、被告において重要な立場にある者であるとの認識を有していたであろうことは容易に推認されるところである。そして、そのような原告が、真実とは認められないのに真実であるかのような印象を与え、A副会長の名誉を傷つける内容の本件書簡を、重要会社の幹部役員三名に送付したことは、社団法人である被告の体面を汚す行為であると解される。〔中略〕 (五) 以上からすれば、原告による本件書簡送付行為は、被告の体面を汚す重大な非行であり、その情状が特に甚だしいといえる。そして、本件記載は真実であるとは認められず、また原告がA副会長の出張旅費二重取得を疑ったことにつき合理性が存するとも認められないのであって、本件書簡送付行為につき原告を懲戒処分に付することを不相当とすべき何らの理由も認められない。そうすると、原告が本件書簡を送付した行為は、就業規則一一条一項二号、三二条一項一号に該当すると認められる。 3 以上のとおり、本件各出金は就業規則一一条一項三号、三二条一項一号、三二条一項三号に、本件書簡の送付は同一一条一項二号、三二条一項一号にそれぞれ該当するので、本件懲戒解雇は有効であると認められる。 |