ID番号 | : | 07137 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | エヌ・ティ・ティ・テレホンアシスト事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 電話の代行業務会社のパートタイマーに対し、顧客との間でトラブルが生じ、禁じられているオペレーターの側から回線を切断したこと等を理由とする解雇につき、解雇権の濫用にも当たらず有効とされた事例。 解雇の意思表示前の就労拒否につき、その間の賃金請求権が認められた事例。 |
参照法条 | : | 民法1条3項 民法563条2項 労働基準法24条1項 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 仕事の不賦与と賃金 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤 |
裁判年月日 | : | 1998年5月29日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成9年 (ワ) 3224 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労経速報1673号14頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕 二 以上の事実に基づき、本件解雇の効力について検討する。 1 前記認定の事実によれば、原告は、平成八年八月二四日及び二七日に顧客とトラブルを生じ、被告において厳しく禁止されているオペレーターの側から回線を切断する行為に出たことが認められるのであって、右行為は、就業規則第一〇条の(5)及び(6)に該当するものということができる。 右事実に加え、原告は、雇用契約が更新される前である平成八年七月以前にも、欠勤、顧客とのトラブル、キーボードの乱暴な取扱いや台の足蹴り、独り言などが多く、特に、同年八月に雇用契約を更新する直前には四日間の無断欠勤をするなど(なお、原告は無断欠勤ではない旨主張するが、(証拠略)、原告本人によれば、原告は、上司から勤務態度について注意され帰宅した後、被告から連絡がないため、届けも出さずに出勤しなかったというのであり、無断欠勤に該当するというべきである)、勤務態度が良いとは決していえなかったこと、原告の回線切断行為があった同年八月二七日に、上司であるA代理から、今後回線切断をしないよう注意されたのに対し、「自分は悪くない。システムが悪い。今後も切ることがある」と、反省の色を見せずかえって開き直るような対応をとったこと、翌二八日以降の原告と被告との交渉においても、被告側が求めた「電話回線を切断しない」ことの確約に難色を示し続けたことを勘案すれば、被告が、原告との雇用関係の回復を断念し、本件解雇に及んだのもやむを得ないことといわなければならず、本件解雇は、解雇権の濫用となるものではなく、有効というべきである。 なお、原告は、雇用契約を更新する前の事情は、本件解雇の正当性を基礎付ける事実とはなり得ない旨主張する。確かに、被告が、原告のそれまでの勤務態度等を認識したうえで雇用契約を更新したのであるから、それ以前の事実そのものを解雇理由とすることは許されないといわなければならない。 しかしながら、本件のように短期の雇用契約の更新が続けられていた場合において、雇用契約更新後行われた就業規則違反行為を理由とする解雇の有効性を判断するに際し、雇用契約更新前の勤務態度等を考慮することは、もとより許されるというべきであるから、原告の主張は理由がない。〔中略〕 〔賃金-賃金請求権の発生-仕事の不賦与と賃金〕 三 原告の賃金請求権について 1 前記のとおり、本件解雇が有効であるとしても、原告の平成八年八月二八日から同年一二月一〇日(解雇の効力が発生した日)までの賃金請求権の有無が問題となる。 この点については、右期間の原告の不就労が、被告の責に帰すべき事由による就労不能であるか否かによって決すべきところ、明記認定のとおり、被告のA代理は、同年八月二七日、原告に対し、「解雇だ。明日から来なくてよろしい」と告げ、西山センタ内に入るために必要な原告のIDカードを取り上げたこと、その後、被告が、原告に対し、出勤を命じた形跡がないことに照らせば、同月二八日以降原告が就労しなかったのは、被告による不当な就労拒否によるものというべきであるから、原告は、右期間の賃金請求権を失わないというべきである。 |