ID番号 | : | 07140 |
事件名 | : | 従業員地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 高松重機事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 経営状態悪化の理由による整理解雇につき、解雇回避努力義務、整理基準の合理性、労働組合との協議についての要件を欠いており、右整理解雇が無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の回避努力義務 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性 解雇(民事) / 整理解雇 / 協議説得義務 |
裁判年月日 | : | 1998年6月2日 |
裁判所名 | : | 高松地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成8年 (ワ) 136 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却、一部却下(控訴) |
出典 | : | タイムズ994号170頁/労働判例751号63頁/労経速報1692号12頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-整理解雇-整理解雇の必要性〕 本件解雇は、現在の危機的経営状況から脱出し経常赤字を黒字に転換することにより将来の企業の維持存続を図るためになされたものであると解され、その限度で被告に整理解雇をなすべき経営上の必要性が存したことは認められるものの、右程度を超えて、差し迫った倒産の危険を回避すべき緊急の必要性が被告に存したとまでは認めるに足りない。〔中略〕 〔解雇-整理解雇-整理解雇の回避努力義務〕 本件解雇を含む黒字転換計画による人員削減は現在の経営危機からの脱出と将来の経営健全化を目的とするものであることを考慮しても、第二次希望退職募集期間経過後わずか一〇日余り後に本件解雇を予告して退職勧奨を行ったことの妥当性については疑問がある。そして、本件解雇後、平成七年一〇月から平成九年六月までの間に合計八名の自主退職者がでていることも考えあわせれば、希望退職募集期間をより長く取り、あわせて残業時間の減少に伴う賃金の減額を説明して従業員からの個別の事情聴取等も行っていれば、希望退職者が増加して本件解雇を回避することができた可能性も否定できない。 (四) したがって、本件においては、被告が整理解雇回避努力を尽くしたというには疑問の余地がある。〔中略〕 〔解雇-整理解雇-整理解雇基準〕 (二) ところで、本件の整理基準は準社員・正社員の区別なく設定され、適用されている。しかしながら、被告における正社員と準社員の地位を比較すれば、前記第三の一1(二)のとおり、準社員は組夫及び臨時工の別称であり、正社員と異なり終身雇用の保証がなく、仕事量の多寡に応じて雇用される流動的な労働者であって雇用調整が極めて容易であることからすれば、準社員は、終身雇用制の期待の下で雇用されている正社員とは企業との結び付きの程度が全く異なり、整理解雇の場面においては、特段の事情がない限り、まずは準社員の人員削減を図るのが合理的であると解される。〔中略〕 (三) したがって、本件においては、整理解雇に当たり準社員と正社員の雇用保証の違いを考慮して被解雇者を選定すべきであったというべきであり、この点で整理解雇基準の設定に合理性がないと考えられる。 〔解雇-整理解雇-協議説得義務〕 被告は、分会に対し、人員削減対策の必要性、実施時期・方法等を提示可能な資料を示して説明し、第二次希望退職募集以後、今後四名の人員削減対策を実施したいとして整理解雇の可能性とその規模に触れて説明したことが認められるが、整理解雇の具体的な実施につき明確な意思表示を避けたまま四名の整理解雇に踏み切ったもので、希望退職募集後の整理解雇の有無・時期・方法、さらに受注台数の減少に伴う整理解雇の必要性につき分会の納得を得るため誠意をもって協議を尽くしたとまでは認めがたい。 |