全 情 報

ID番号 07151
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 グリン製菓事件
争点
事案概要  本件会社解散は偽装解散ではないが、それに伴う解雇については、組合との団体交渉の継続中に突然になされたものであり、解雇基準の合理性やその手続全体の適法性に疑問が残るものであり、信義則に反するもので解雇権の濫用に当たり無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条2項
民法1条3項
商法406条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約の承継 / その他
解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1998年7月7日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成9年 (ヨ) 2963 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労働判例747号50頁/労経速報1681号17頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約の承継-その他〕
〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 債務者の意思は、当初より、工場を閉鎖して企業廃止する方向であり、組合との交渉においては、一時は組合に対し会社再建の方向への配慮を示すような態度を示したものの、結局、再建に関しては組合との間で真剣な協議をしておらず、その真意に変わるところがなかったもので、右の交渉経過における債務者の態度からすると、組合嫌悪の意図は窺われるが、それが本件解散及び本件解雇を決意したもっぱらの動機であるとか、それを手段として組合活動、団体交渉を止めさせようとしたとは認め難く、本件において、不当労働行為意思による解雇であるとまでは認められない。
 4 ところで、解散に伴う全員解雇が整理解雇と全く同列に論じられないことは言うまでもないが、いわゆる解雇権濫用法理の適用において、その趣旨を斟酌することができないわけではない。
 すなわち、解散に伴う解雇を考える場合に、整理解雇の判断基準として一般に論じられているところの四要件のうち、人員整理の必要性は、会社が解散される以上、原則としてその必要性は肯定されるから、これを問題とすることは少ないであろう。また解雇回避努力についても、それをせねばならない理由は原則としてないものと考える。しかし、整理基準及び適用の合理性とか、整理解雇手続の相当性・合理性の要件については、企業廃止に伴う全員解雇の場合においては、解雇条件の内容の公正さ又は適用の平等、解雇手続の適正さとして、考慮されるべき判断基準となるものと解される。
 したがって、本件解雇においても、その具体的事情の如何によっては、右要件に反し、解雇権濫用として無効とされる余地はありうるものと考えられる。〔中略〕
 (三) したがって、本件解雇は、上述のとおり、債権者らの債務者の解雇条件の決定手続に対する参加の機会を与えておらず、組合との団体交渉の継続中に突然になされたものであって、解雇基準の合理性やその手続全体の適正さには疑問が残るものであり、本件解雇に関する債務者からの誠意ある話し合いがあったとは認められないことからすると、右信義則上の義務を尽くしてなされたものであるとは認め難く、その限りで、本件解雇は、債権者らの手続上の権利を害し、信義則上の義務に違反したものとして、解雇権の濫用に当たり、無効となると解すべきである。