全 情 報

ID番号 07154
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 フットワークエクスプレス事件
争点
事案概要  長距離トラックの運転手が駐車中の車両と接触事故をおこしたこと、その事故の報告を怠ったことを理由とする諭旨解雇処分につき、被害弁償が円満に終了していること等により懲戒処分事由に該当せず無効とされた事例。
 解雇期間中に労働者が得た中間収入につき六割を超える限度で控除できるとされた事例。
参照法条 民法536条2項
労働基準法89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / バックペイと中間収入の控除
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1998年7月15日
裁判所名 山口地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 82 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例749号61頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 原告のAらに対する行動は、前記(一)(1)のとおり、被告の業務としてトラックを運転中、自らの過失により本件事故を引き起こした被告従業員の被告への対応としては、誠実さに欠ける面があり、被害者から使用者責任を問われる被告の早期の対応を遅らせ、企業としての社会的信用を害するおそれがある行為であるとともに、使用者たる被告との労働契約上の信頼関係を損なう行為というべきであるから、原告は、本件事故発生及び爾後の対応について、本件就業規則に基づき、被告から何らかの懲戒処分を受けてもやむを得ないというべきである。
 しかしながら、前記(一)(1)のとおり、原告は、本件事故につき、被害車両を損傷したことを認識しながら、あえてこれを放置したとまでは認められないこと、前記(一)(2)〔1〕及び〔2〕の原告の行動が、被告に損害を加える意図またはそのおそれがあることを認識しながらなされたものとまでは認められないこと、被害者側との間では、被害車両の損壊につき、修理代金を被害者側に交付することで被害弁償が円満に終了していること(〈証拠略〉、弁論の全趣旨)、具体的に被告の社会的信用を失墜させる結果の発生が認められないことに加えて、解雇処分が労働者に与える影響の重大性を考え併せると、前記(一)で認定した本件事故の態様及び爾後の原告の対応が、懲戒(諭旨)解雇処分該当事由としての本件就業規則第一四二条四号または一三号に該当するとまではいえず、また、同条一九号により、解雇処分とするのは、懲戒処分としては重きにすぎ、本件が同号に該当するということもできない。
 3 本件処分の効力
 よって、原告に対してなされた被告の本件処分は、就業規則の適用を誤り、懲戒(諭旨)解雇事由がないにもかかわらず行われたものであるから、争点1(二)及び(三)につき判断するまでもなく、本件処分をする旨の意思表示は無効である。
〔賃金-賃金請求権の発生-バックペイと中間収入の控除〕
 二 争点3(中間収入の控除の有無及びその範囲)について
 1 使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職について収入を得た場合、解雇期間中に使用者が支払うべき賃金債務のうち六割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に労働者が得た右収入を損益相殺として控除できる。