ID番号 | : | 07155 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 協成建設工業ほか事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 札幌建設運送事業協同組合に入社し、Y株式会社に出向していた労働者が、会社が受注した国道拡幅のための擁壁工事が進捗せず、工事が遅れたことを気に病んで自殺したケースにつき、遺族が自殺は、会社及び出向元の安全配慮義務違反によるものであるとして、右両者を相手として損害賠償を請求した事例(一部認容)。 |
参照法条 | : | 民法415条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1998年7月16日 |
裁判所名 | : | 札幌地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成8年 (ワ) 2164 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例744号29頁/労経速報1686号14頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 下村正明・私法判例リマークス〔20〕<2000〔上〕>34~37頁2000年2月 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 右(一)で認定した事実、殊に、本件工事が豪雪等の影響で大幅に遅れ、休日出勤や時間外勤務の継続を余儀なくされたうえ、Aが自殺する直前の平成八年三月五日ころ、工事量を大幅に減少する変更をしてようやく工期までに完成することができる状態になったこと、Aが家族や周囲の者に対し本件工事が遅れていることを気に病む言動をしていたこと、平成七年一二月以後時間外勤務が急激に増加し、平成八年二月及び三月には一日平均三時間三〇分を超える時間外勤務をしたほか、平成七年一二月以後、三一日の休日中一六日間休日出勤をしたこと、そのため、Aは、平成七年一月ころには体重が約一〇キログラム減少し、不眠等を訴えて医院を受診するようになったこと、B宛ての遺書に「仕事をやっていて何がなんだか分からなくなってしまいました。私の管理能力のなさを痛感しています。」「その他関係各社へご迷惑をお掛けして申し分けありません」との記載があること、Aは、C胃腸科内科医院で特に異常所見がない旨告げられており、私病が原因で自殺をするとは考え難いことなどの事実を考慮すると、Aは、本件工事の責任者として、本件工事が遅れ、本件工事を工期までに完成させるため工事量を大幅に減少せざるを得なくなったことに責任を感じ、時間外勤務が急激に増加するなどして心身とも極度に疲労したことが原因となって、発作的に自殺をしたものと認められる。〔中略〕 被告らは、Aの使用者として、労働災害の防止のための最低基準を守るだけではなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通して職場における労働者の安全と健康を確保する義務(労働安全衛生法三条)を負っている。そして、被告会社は、本件工事を請け負い、本件工事遂行のためAを所長として本件工事現場に派遣していたのであるから、適宜本件工事現場を視察するなどして本件工事の進捗状況をチェックし、工事が遅れた場合には作業員を増加し、また、Aの健康状態に留意するなどして、Aが工事の遅れ等により過剰な時間外勤務や休日出勤をすることを余儀なくされ心身に変調を来し自殺することがないよう注意すべき義務があったところ、これを怠り、本件工事が豪雪等の影響で遅れているのに何らの手当もしないで事態の収拾をAに任せきりにした結果、右一のとおり、Aを自殺させたものであるから、被告会社にはA死亡につき過失が存する。しかし、被告組合については、Aを在籍のまま被告会社に出向させているとはいえ、休職扱いにしているうえ、本件工事を請け負ったのが被告会社であって被告組合としては本件工事の施工方法等について被告会社等を指導する余地はなかったと認められるから(〈証拠・人証略〉)、Aの自殺について被告組合に責任があるとは認められない。 |