ID番号 | : | 07164 |
事件名 | : | 賃金額等確認処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 豊中管材・茨木労働基準監督署長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 賃金支払確保法施行令に基づいて倒産が認定された会社の従業員に対する退職金額の計算につき、同社の代表取締役の所在が不明となったときから就労をしておらず、同日を退職基準日とした原処分が維持された事例。 倒産が認定された会社には退職金規程が存在せず、具体的な退職金請求権は発生しないとして、賃金支払確保法に基づく退職金の支払を認めなかった原処分が維持された事例。 |
参照法条 | : | 賃金の支払の確保等に関する法律7条 賃金の支払の確保等に関する法律施行令3条 賃金の支払の確保等に関する法律施行令4条 労働基準法89条1項3の2号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 賃金(民事) / 賃金の支払の確保等に関する法律 |
裁判年月日 | : | 1998年7月29日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成8年 (行ウ) 148 平成9年 (行ウ) 12 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例747号45頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 小西國友・ジュリスト1156号160~164頁1999年6月1日 |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金の支払の確保等に関する法律〕 未払賃金立替制度は、労災保険の適用事業に該当する事業の事業主が破産の宣告を受け、その他賃確令で定める事由に該当することとなった場合において、当該事業に従事する労働者で、賃確令で定める期間内に当該事業を退職した者に係る未払賃金(支払期日の経過後、いまだ支払われていない賃金)があるとき、当該労働者の請求に基づき、当該未払賃金に係る債務のうち賃確令で定める範囲内のものを、事業主の出資による労働保険料を原資とする労働保険特別会計労災勘定を財源として(賃確法九条、労災保険法二四条)、国が当該労働者に支払うという制度である(賃確法七条)。立替払を受けることができる者は、企業の倒産に伴い退職し、未払賃金が二万円以上残っている者であって、かつ裁判所に対する破産等の申立日(法律上の倒産の場合)又は労働基準監督署長に対する倒産の認定申請日(事実上の倒産の場合)の六か月前から二年の間に、当該企業を退職した者であり(賃確法七条、賃確令三条、四条二項)、立替払の対象となる未払賃金は、右退職日を基準退職日として(賃確令四条一項一号)、その六か月前の日から国に対する立替払請求日の前日までの間に、支払期日が到達しながら未払となっている定期賃金及び退職手当である(賃確法七条、賃確令四条二項、賃確則一六条)。 そして、企業倒産等に伴う労働者の保護という賃確法の立法趣旨からするときは、右基準退職日の退職とは、契約期間満了による自然退職や労働者の意思に基づく任意退職のみならず、解雇その他により雇用契約が終了する場合や、法律上は雇用契約の明確な終了原因が存しない場合であっても労働者が事実上就労しなくなった場合も含まれると解すべきである。けだし、このような場合には、労務提供の受領拒絶は事業主の責に帰すべき事由によるものであるから、労働者が自ら解約の申出をしない限り、未払賃金は増大してゆくのであって、これを全て立替払の対象にすることは、現に就労していない労働者の保護として明らかに行き過ぎであり、ひいては未払賃金立替払制度の健全な運営を阻害することとなるからである。 これを本件においてみると、原告Xが平成八年二月二日、A会社の倒産認定を申請し、同年三月二七日被告が同認定を行ったことは当事者間に争いがなく、前記認定のとおり、平成七年一〇月二〇日、Aが出奔して後、A会社の事務所は閉鎖されたままで、原告らが同所において就労した事実はない上、Aの出奔を知った原告らが、その後直ちに自らの未払賃金回収のために奔走していたことは認められるものの、これをA会社の業務としてなしたとまではいえないもので、他にA会社の業務に従事していたと認めるに足りる証拠はない。 したがって、原告らは、賃確法の適用においては、A会社で就労していたと認められる最後の日である平成七年一〇月二〇日をもって退職したものと解すべきである。〔中略〕 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 〔賃金-賃金の支払の確保等に関する法律〕 A会社に退職金規程が存在しないことは当事者間に争いがなく、Aが述べた退職金の支給基準については業界並という曖昧なもので、算定根拠となるようなものではなく、これまでの支給例も一例にすぎず、その支給額の算定根拠も不明であって、支給基準は不明というほかなく、具体的な退職金請求権の根拠となるべき合意があったとまではいえず、退職金支給の慣行があったとも認められないところである。 2 以上によれば、原告らが、A会社に対し、具体的な退職金請求権を有していたとは認められず、これと同旨の判断の下にした第二処分及び第四処分(ただし、退職手当に関する部分のみ)は、いずれも適法である。 |