ID番号 | : | 07165 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 中央ビル管理事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 勤務態度不良等を理由とする解雇につき、解雇権濫用に当たり無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 民法1条3項 労働基準法2章 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1998年8月10日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成6年 (ワ) 22162 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労経速報1690号20頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 〔解雇-解雇権の濫用〕 1 一億一〇〇〇万円余りの預金の移動について〔中略〕 原告が直接預金の移動に関与していないことは明らかであるし、仮にAの指示で右書面を作成したとしても、一億一〇〇〇万円余りは最終的に亡Bの口座へ入金されており、右についてはCも首肯するところであり(書証略)、右書面の作成や預金の移動は、被告との関係でどのような背任行為に当たるのか判然とせず、原告の被告に対する背任行為であるということはできない。 2 印鑑類、不動産の権利証等重要書類の隠匿行為について 被告は、平成六年四月二八日の業務終了後、A、D及び原告が隠匿行為の相談をしたと主張し、C及びEは別件における本人尋問や証人尋問において右の趣旨を述べる(書証略)が、右はいずれも伝聞ないしは推測であってにわかに信用することはできない。〔中略〕 3 印鑑紛失の件について DがCから印鑑を持ってくるように指示された際、Dが印鑑が見あたらない旨回答した事実は前記のとおりであるが、被告の主張によっても、印鑑紛失の件に原告の関与までは主張していないし、これを認めるに足りる証拠もない。 4 原告の経理処理及び経理処理能力について 被告の主張(四)〔1〕(現金残高表の作成等)については、(書証略)によれば、被告が原告作成の現金残高表であると主張する書面(書証略)は、被告の正式書類ではなく、原告が帳簿と伝票の数字をチェックするために個人的な心覚えとして作成した、いわばメモにすぎないものであることが認められる。そうだとすれば、右書面に不備な点があったとしても、それをもって、原告の経理処理の不備、経理処理能力の欠如ということはできない。〔中略〕 5 無断外出について 平成六年八月一七日に原告とDがCに無断で外出したことは当事者間に争いがない。しかし、(書証略)によれば、右外出はAの指示によること、原告及びDは帰社後Cの指示に従って外出届を提出していることが認められる。原告及びDとしては、被告の役員であり、それまで指示を受けていた立場であったことから、Aの指示を拒否することはできなくても当然であるし、帰社後はCの指示に従って外出届を出して、反省の態度を示していることからすれば、この点について原告を非難するのは酷にすぎるというべきであるし、その他原告の勤務態度がルーズであったことを認めるに足りる証拠もない。 6 原告の勤務態度について 被告の主張に沿うかのような報告書(書証略)もあるが、そもそも被告の主張自体抽象的であり、到底認めることはできない。 以上によれば、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができないというほかないから、権利の濫用に当たり無効である。 |