ID番号 | : | 07174 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東洋信託銀行事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 多額の負債を負っていること、暴行事件で逮捕・留置されたこと、上司の命令を無視したこと等を理由とする解雇につき、雇用を継続しがたい合理的かつ正当な理由があるとして有効とされた事例。 懲戒解雇事由があっても普通解雇にすることが許されるとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 上司反抗 解雇(民事) / 解雇事由 / 逮捕・拘留 解雇(民事) / 解雇事由 / 人格的信頼関係 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒解雇の普通解雇への転換・関係 |
裁判年月日 | : | 1998年9月14日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成9年 (ワ) 13511 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1687号23頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒解雇の普通解雇への転換・関係〕 (一) 被告の就業規則には懲戒解雇に関する規定のほかには解雇について定めた規定はない(前記第三の一1(五))というのであるから、解雇自由の原則に照らし、当該具体的な事情の下において解雇に処することが著しく不合理であり社会通念上相当なものとして是認できないときには当該解雇が無効とされる場合があるほかは、解雇は自由になしうるものというべきである(本件全証拠に照らしても、被告が解雇自由の原則に基づいてその従業員を解雇する(解雇自由の原則に基づいてする解雇を以下「普通解雇」という)権限を一切放棄し、懲戒解雇権しか行使しないこととしたことを認めるに足りる証拠はない。就業規則には懲戒解雇に関する規定しか設けられていないことをもって、被告は就業規則上普通解雇権を一切放棄し懲戒解雇権しか行使しないこととしたということはできない。原告はその本人尋問において被告では解雇といえば懲戒解雇しかなかったと供述しているが、この供述は右の判断を左右しない)ところ、本件解雇が被告の就業規則に規定する懲戒解雇としてされたものでないことは証拠(略)から明らかである。 〔解雇-解雇事由-上司反抗〕 〔解雇-解雇事由-逮捕・拘留〕 〔解雇-解雇事由-人格的信頼関係〕 (二) そこで、本件解雇が普通解雇に当たるとして、本件解雇についてその具体的な事情の下において解雇に処することが著しく不合理であり社会通念上相当なものとして是認できない事情があるかどうかについて検討するに、 (1) 原告は本件解雇の時点において多額の負債を負っており、また、本件解雇までに暴行事件を起こして逮捕され警察に留置されたり、上司の命令を無視したりした(前記第三の一1(一)ないし(三))というのであるから、およそ原告は被告の従業員としての適格性に欠けているというべきであり、本件解雇には原告との雇用を継続しがたい合理的かつ正当な理由があるというべきである。そして、労働基準法二〇条に基づいて原告に対し解雇予告手当を支払った(前記第三の一1(四))のであるから、本件解雇は有効である。 (2) これに対し、原告が暴行事件を起こして逮補されたことがマスコミによって報道されたこと(前記第三の一1(二))が被告の就業規則第五四条の2の六号に、原告が上司の命令を無視して業務外の件を行おうとしたこと(前記第三の一1(三))が被告の就業規則第五四条の2の三号に、それぞれ該当するといえなくもない(答弁書の五丁裏六行目から八行目の「思料された」までによれば、被告は右の件が懲戒解雇事由に当たると考えているようである)が、懲戒解雇事由に該当する行為があっても、懲戒解雇という手段を採らずに普通解雇することはできるものと解されるから、仮に右の件が懲戒解雇事由に該当するとしても、懲戒解雇事由のある従業員について普通解雇したことをもって本件解雇の効力が左右されるわけではない。 3 以上によれば、原告の被告に対する従業員としての雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認請求は理由がない。 |