ID番号 | : | 07191 |
事件名 | : | 遺族補償給付等不支給処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 美濃かしわ・関労働基準監督署長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 鶏肉解体作業に従事する者が脳動脈瘤破裂により死亡したケースにつき、業務による過度の精神的、肉体的負担によって、先天的要因と境界域高血圧という基礎疾患が自然の経過を超えて急激に悪化したために発症したものと認められ、業務との間に相当因果関係ありとして、原処分を取り消した原審が認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法7条1項1号 労働者災害補償保険法15条 労働者災害補償保険法35条 労働者災害補償保険法36条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等 |
裁判年月日 | : | 1998年10月22日 |
裁判所名 | : | 名古屋高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成8年 (行コ) 30 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例749号17頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕 前記判断(原判決引用)のとおり、疲労の蓄積あるいはストレスは、脳動脈瘤の増大及び破裂の危険因子となるところ、高血圧自体も脳動脈瘤破裂の危険因子であるから、境界域高血圧の労働者にとっては、そうでない労働者と比較して、疲労の蓄積あるいはストレスはより危険因子になりやすいといえる。 前記認定(原判決引用)のとおり、Aは、発症前七か月間にわたる慢性的に続いたともいえる著しく長い労働時間(ただし、発症前一か月間は若干軽減した)と作業環境により、発症一週間前の段階では相当な疲労が蓄積し、比較的軽度の刺激によっても血圧が上昇しやすい状態になっており、Aが発症直前に行っていた作業は、Aの血圧を相当程度上昇させるに足りるものであった。その一方、Aの血圧が境界域高血圧の限度で止まっており、前記認定(原判決引用)の脳動脈瘤の破裂率を考慮すると、Aの年齢を考慮しても、Aの脳動脈瘤が右のような要因を受けることなく自然的に経過したときにも、破裂を発症させる状態であったとは直ちにはいえないところである。また、発症前七か月間において、Aの業務外の生活において、疲労の蓄積あるいはストレスの増大をもたらし、あるいは血圧の上昇をもたらす事由の存在は認められない。 そうすると、Aの脳動脈瘤破裂は、業務による過度の精神的、肉体的負担によって、先天的要因と境界域高血圧という基礎疾患が自然の経過を超えて急激に悪化したために発症したものと認められ、業務との間に相当因果関係があると認めるのが相当である。 |