全 情 報

ID番号 07196
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 日進工機事件
争点
事案概要  企業廃止に基づく従業員の全員解雇につき、他会社に営業が承継されており、廃止を仮装したものであり、解雇は無効とされた事例。
 企業廃止に伴い実質的一体性を有する会社に営業譲渡されており、労働関係も継承されているとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
商法245条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約の承継 / 営業譲渡
解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更
裁判年月日 1999年1月11日
裁判所名 奈良地
裁判形式 決定
事件番号 平成10年 (ヨ) 114 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労働判例753号15頁/労経速報1698号26頁
審級関係
評釈論文 土田道夫・ジュリスト1186号111~113頁2000年10月1日
判決理由 〔労働契約-労働契約の承継-営業譲渡〕
〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更〕
 四 債務者はA株式会社の解散に続いて、債務者会社自身も近く解散する予定である旨の主張をするものであるが、前項に認定した事実に鑑みるときは、かかる主張事実は客観的に認めがたいと言うにとどまらず、かえって債務者会社並びにその代表者BらがA株式会社の不動産、機械工具類の一式を譲り受けることによって、A株式会社が行っていた営業を、規模を縮小しながらも継続する意思を有しているものと一応認められるところである。A株式会社の機械工具類は、平成一〇年一〇月五日付で第三者であるC株式会社に売却されているものではあるが、前認定のとおりこれは平成一〇年七月五日付売買でBらが買い受ける契約をした目的物と同一のものであると解され、真実Bらが営業廃止の意思のもとにこれを処分したものとまで認めることが出来ない。
 そうするとA株式会社がした本件解雇は債務者の主張によれば企業廃止に基づく従業員の全員解雇であるというのであるが、実質的にはこれと一体となってBが采配する建設機械類の製造販売業を営む債務者会社にその営業は継承されるものと認められるのであって、その企業廃止という前提は廃止を仮装したものであると一応認められる。そうすると本件解雇は無効であるというほかない。
 なおA株式会社が一般的な経営危機の中にあり、人員乃至会社組織を整理することなくしては企業の存続が危うい状況下に仮にあるものとしても、本件解雇は全員解雇であって被解雇者の選定の合理性を全く欠くものであるから、これを整理解雇として有効とみることもできない。
 五 以上のとおり本件解雇は無効であると言うべきところ、A株式会社の営業は、これと実質的一体性を有する債務者会社に継承されるものであること前認定のとおりであるから、債権者らとA株式会社との間の労働関係も、債権者らと債務者会社との間の労働関係として継承されるものと言うべきである。