ID番号 | : | 07201 |
事件名 | : | 遺族補償給付等不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 茅沼炭鉱・小樽労働基準監督署長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 炭鉱における作業に従事していた原告がじん肺にかかり、後に肺がんで死亡したケースにつき、じん肺と肺がんとの間に因果関係なしとした労基署長の労災保険不支給処分に対する取消請求に対し、右因果関係なしとして原告の請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法75条2項 労働基準法施行規則35条別表第1の2第1~8号 労働者災害補償保険法7条1項1号 労働者災害補償保険法12条の8 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病 |
裁判年月日 | : | 1997年1月28日 |
裁判所名 | : | 札幌地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (行ウ) 12 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 訟務月報44巻9号1650頁 |
審級関係 | : | 控訴審/07040/札幌高/平 9.10.31/平成9年(行コ)2号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕 五ママ Aの肺がんとじん肺との因果関係 1 前項認定の医学的見解(じん肺患者に肺がんの合併率の高いことを指摘する見解はあるが、昭和五三年に作成された専門家会議報告書では、じん肺と肺がんとの間の因果関係を肯定まではしていないし、平成五年に作成された調査研究報告書においても、じん肺と肺がんとの因果関係は肯定されていない)及び〈証拠略〉を総合すれば、じん肺と肺がんとの間の因果関係を肯定する医学的知見が確立されている、とは認め難い。 そして、じん肺(けい肺)の原因物質であるけい酸にヒトに対する発がん性があることは、いまだ確定されていないこと、じん肺患者に肺がんが発生する仕組みについての見解は、現時点では仮説の域を出ず、医学上の定説とは言い難いこと、じん肺合併の肺がんの発生過剰についても、これを肯定する見解に対しては疫学的批判があるし、そこで指摘される肺がんの発生リスク自体も一般に承認されている職業がんの原性因子のもつ発生リスクと比較して同等以上の危険性がある、とも認められないことや、六〇八号通達の趣旨等を考慮すれば、じん肺が肺がんを招来する高度の蓋然性がある、と認めることは困難である。 したがって、じん肺と肺がんとの間に一般的因果関係があることを前提として、Aの肺がんによる死亡が業務上の死亡である、とする原告の主張は採用できない。 2 原告は、Aの肺組織中にじん肺結節があり、肺がん巣の内部及び近傍にも軽度ないし中程度の同結節があるから、Aの肺がんがじん肺によるものである旨主張する。 確かに、成立に争いのない甲第一四号証によると、昭和五五年発行の第三一回日本肺癌学会総会号において、B病院とC病院の臨床病理学的検討の結果として、けい肺症における肺内結節病巣と末梢型肺がん発生の関連性が示唆される、と報告されている。しかしながら、右知見が医学的に承認された、と認めるに足りる証拠はなく、これをもって、Aの肺がんによる死亡が業務上の死亡である、と認めることもできない。 3 右のとおり、Aの肺がんとじん肺との間には相当因果関係を認めることはできない。したがって、Aの肺がんが労働基準法施行規則三五条別表第一の二第九号にいう業務上の疾病とは認められない。 |