全 情 報

ID番号 07208
事件名 地位確認等請求、一時金支払請求事件
いわゆる事件名 直源会相模原南病院事件
争点
事案概要  病院のケースワーカー、事務職員で、当該病院の組合の正・副委員長を含む六名の組合員が、ナースヘルパーへの配置転換、業務命令に従わなかったこと、解雇反対の組合ビラに病院の電話番号を記載するなど違法な組合活動を行ったとして解雇され、その無効を争ったケースで、地位確認については認容されたが、一時金については使用者が原告ら職員にその査定の意思表示をしていないことを理由にその請求権がないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法11条
労働基準法89条1項3号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
裁判年月日 1998年1月27日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 1624 
平成8年 (ワ) 204 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例761号126頁
審級関係 上告審/07344/最高二小/平11. 6.11/平成11年(オ)450号
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 右に述べた事情を総合すると、被告は、原告X1、原告X2及び原告X3に対し、労務指揮権に基づいて、現に従事している業務の担当から、異なる業務の担当への、異なる職種間の配転を命ずることができ、右原告らもこれに応ずべき義務があるというべきであるが、少なくとも事務的作業を職務内容とする職種から労務的作業を職務内容とする職種への配置換えを命ずるには、客観的にみてそのような職種の範囲を超えて配置換えを命ずる必要性と合理性が存し、かつ、その点についての十分な説明をするのでなければ、一方的に労働契約の内容を変更するものというべきであって、前記就業規則の定めにもかかわらず、これをなしえないものというべきである。したがって、上記認定の事実関係の下において、右原告らには就業規則一四条第二文所定の異動を拒むべき正当な理由があったものということができ、右原告らが被告の配転の命令を拒否したことをもって就業規則二四条一項三号、五号に該当する事由があるということはできない。
 5 以上のとおり、原告らの解雇事由に関する被告の主張にはいずれも理由がないから、本件各解雇は、いずれも無効である。したがって、争点二及び三について判断するまでもなく、原告らが被告に対して労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める各請求は理由がある。〔中略〕
〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕
 被告の従業員に支給される一時金は、就業規則、給与規定等により支給条件が明確に定められ、労務を提供すればその対価として具体的な請求権が発生する賃金とは性格を異にするものであり、従業員と被告との間において金額及び算出基準等の支給について具体的な合意と被告の査定の意思表示がない限り、具体的な請求権として発生するものではないと解するのが相当である。〔中略〕
 被告の賞与規定において、賞与を支給する場合は全額人事考課査定とすると定められており、七年度協定及び六年度協定においても全額人事考課査定とすることが合意されていることは、いずれも前記のとおりであるから、平成六年度年末及び平成七年度夏季の一時金については、被告の裁量による個別的な意思表示をもって初めてその請求権が発生するものというべきである。そして、本件において取り調べた証拠関係を総合しても、被告が原告らにかかる右各一時金について査定の意思表示をしたことを認めることはできない〔中略〕
 したがって、原告らの本訴請求に係る各一時金については、その請求権はないから、その支払を求める右各請求はいずれも理由がない。