ID番号 | : | 07223 |
事件名 | : | 超過勤務手当請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 愛知県(警察官)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 交番勤務の警察官が、三交替勤務における当務日の八時間の休憩時間のうち、(1)五時間の仮眠時間を除く三時間は休憩の実体を有していないとして、(2)また一時間の休息時間が与えられていないとして、一当務日当たり四時間の時間外勤務手当を請求したのに対し、(1)については休憩時間の実体を備えているとして、(2)については時間外勤務手当の対象になっていないとして、右請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法34条3項 労働基準法37条 労働基準法40条1項 労働基準法施行規則33条1項1号 |
体系項目 | : | 休憩(民事) / 「休憩時間」の付与 / 休憩時間の定義 休憩(民事) / 休憩の自由利用 / 自由利用 休憩(民事) / 休憩時間(公務員) 賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務 |
裁判年月日 | : | 1998年9月30日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成9年 (ワ) 297 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 時報1670号88頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔休憩-「休憩時間」の付与-休憩時間の定義〕 〔休憩-「休憩時間」の付与-休憩時間の不付与と自力救済〕 (五) 交番に勤務する警察官は、定められた制服を着用し、制服のズボン腰部には帯革を付け、それにけん銃、警棒及び手錠を着装するとともに、警察署との交信用の署活系無線機及び本部系無線傍受のための受令機を携帯することが義務付けられているが、休憩時間中についてまで制服の着用、けん銃等の着装は義務付けられておらず、署活系無線機及び受令機についても休憩時間中の傍受までが義務付けられていたわけではなく、休憩時間中については、制服、けん銃、無線機等の適正な管理が義務付けられていたにすぎない。なお、休憩時間中に急訴事件等が発生し、勤務変更をして対応することになった場合は、その必要が生じたことを認知した時点で速やかに態勢を整えて対応することになっていたものであり、常時、制服、けん銃等の装備品を着装して直ちに出向できる態勢を保持することまで義務付けられてはいなかった。 (六) 原告の平成八年一月から同年一二月までの一当務日当たりの活動実績は、別紙2の「一当務当たりの活動実績原告欄」に記載のとおりであり、また、同期間における愛知県港警察署地域課警察官の一当務日当たりの活動実績は、別紙2の「一当務当たりの活動実績港署平均欄」に記載のとおりであって、原告の一当務日当たりの活動実績は平均以下であり、休憩時間を勤務変更しても、別途休憩時間が取得できなくなるような勤務状態ではなかった。 (七) 地域警察は、勤務員の一部が休憩中であっても、組織としては常に活動を行っていることから、交番に勤務する警察官は、緊急時における連絡及び体制確保等のために、休憩時間においても、許可を得ずにみだりに勤務場所を離脱しないことを義務付けられているが(ただし、勤務に影響を及ばさない範囲で、警察幹部の許可を得て、連絡体制を確保しつつ交番以外に出かけることは許されている。)、休憩時間中に事件、事故等が発生した場合は、原則として勤務中の他の警察官が処理する体制となっており、休憩時間中の警察官が処理することとなるのは、緊急の場合、重要な事案発生の場合等、その時々の状況によりやむを得ない場合だけであって、このように休憩時間中の警察官が処理した場合は、前記(四)のとおり、事前又は事後に直属の地域警察幹部の承認を受けることによって、その後の勤務時間に代わりの休憩を取得することができるようになっている。 2 判断 (一) 被告が、小休憩時間につき、〔1〕許可を得ずみだりに勤務場所を離脱しないこと、〔2〕けん銃、無線機、制服等について適正に管理すること、〔3〕急訴事件等があり、やむを得ずこれらに勤務として対応する必要が生じた場合は勤務変更をすることとの制約を課していたことは、被告の自認するところであるが、警察の責務は極めて公共性が強く、市民生活の安全と平穏を守るために、昼夜を分かたず職務を遂行しなければならないこと、そのため労働基準法四〇条一項、労働基準法施行規則三三条一項一号も、警察官については休憩時間の自由利用の原則の適用を排除していることを考慮すると、前記1に認定した小休憩時間の実態からすれば、右小休憩時間は実質的な勤務時間または手待時間とは認められず、労働基準法所定の休憩時間としての実体を備えているものということができる。〔中略〕 〔休憩-休憩時間(公務員)〕 〔賃金-割増賃金-支払い義務〕 2 判断 休息時間は、勤務時間の中に割り振られているものであって、通常の勤務時間に対する給与支払の対象となっている時間であるから、現実に休息したか否かにかかわらず時間外勤務手当の対象とはなり得ないものである。 |