全 情 報

ID番号 07226
事件名 地位確認等請求事件、業務妨害等差止請求事件、慰謝料請求事件
いわゆる事件名 吉福グループほか事件
争点
事案概要  自動車運転手の解雇につき、営業部次長に刑事処分を受けさせる目的で虚偽の過積載の事実を申告したと直ちに推認できないとして、解雇事由となるまでの重大性はなく、無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 就業規則所定の解雇事由の意義
解雇(民事) / 解雇事由 / 名誉・信用失墜
裁判年月日 1998年10月14日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 1312 
平成8年 (ワ) 1045 
平成8年 (ワ) 3605 
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例754号63頁/労経速報1717号7頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-就業規則所定の解雇事由の意義〕
〔解雇-解雇事由-名誉・信用失墜〕
 A会社は、平成六年六月三〇日、次の各事実が「服務規律を乱し、または会社の業務運営を妨げ、または会社に協力しないとき(就業規則一二条五項)」に該当するとして、Bに対し解雇の意思表示をした。
 (一) A会社の営業部次長であるCに刑事処分を受けさせる目的で、Cが過積載の責任者である旨の虚偽の事実を申告した(以下「解雇事由〔1〕」という。)。〔中略〕
 (三) D会社の発注について延着し、後日D会社に対しA会社に苦情の電話をしたことを詰問した(以下「解雇事由〔3〕」という。)。〔中略〕
 Bが過積載の自己申告の際、右以外に何を供述したかは証拠上明らかではない。また、Cは、配車係を統括する営業部次長の地位にあったのであるから、警察がCの取調べを考えることは、Bの供述の内容如何にかかわらず当然に起こりうることである。そうだとすると、Bが過積載の自己申告をし、結果としてCが取調べを受けたとしても、BがCに刑事処分を受けさせる目的で虚偽の事実の申告をしたと直ちに推認することはできない。
 よって、解雇事由〔1〕は認めることができない。〔中略〕
 (2) 二トン車乗務への配置換えとD会社への電話
 Bは、平成六年五月九日、トレーラー乗務から二トン車乗務に配置換えになったため、同月一一日、D会社に直接電話をし、自分が延着したため同社とA会社の取引の継続が危ぶまれているかどうかを確認し、かつ、右延着によって配置換えがされた旨を伝えた。D会社はBの電話に不快感を抱き、その旨A会社に連絡した。
 なお、運送業界において、荷主の意向は第一とされ、運送会社乗務員が会社を通じることなく荷主に対し直接詰問することは許されないとの認識があった。
 (二) 右の各事実によれば、BがD会社に右の内容の電話をかけ、不快感を与えたことが認められる。
 しかしながら、D会社への電話は一回のみであること、A会社とD会社との取引量が減少したというようなA会社の業務上の信用を毀損した事実は証拠上窺われないことを考慮すると、Bの右行為には解雇事由となるまでの重大性はないというべきである。
 したがって、解雇事由〔3〕の事実は認められるものの、これのみをもって解雇がやむをえなかったとはいえない。