全 情 報

ID番号 07248
事件名 地位保全確認等、一時金支払請求控訴事件
いわゆる事件名 直源会相模原南病院事件
争点
事案概要  病院のケースワーカー、事務職員で、当該病院の組合の正・副委員長を含む六名の組合員が、ナースヘルパーへの配置転換、業務命令に従わなかったこと、解雇反対の組合ビラに病院の電話番号を記載するなど違法な組合活動を行ったとして解雇され、その無効を争ったケースで、地位確認等の請求を一部認容した原審判断が維持され、病院側の控訴が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
労働基準法11条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
裁判年月日 1998年12月10日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ネ) 835 
裁判結果 一部認容、一部棄却(上告)
出典 労働判例761号118頁
審級関係 上告審/07344/最高二小/平11. 6.11/平成11年(オ)450号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 次のように、付加、訂正、削除するほかは、原判決事実及び理由の「第三争点に対する判断」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。〔中略〕
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 一審被告就業規則一四条の『業務上の必要により職種の変更を命ずることがある』旨及び『職員は、正当な理由なくして、異動を拒むことはできない』旨の規定は、一般職員については、同じ業務の系統内(事務職職(ママ)系内、労務職系内)での異なる職種間の異動(例えば薬局助手から医療事務職、調理員から看護助手)についての規定であり、業務の系統を異にする職種への異動、特に事務職系の職種から労務職系の職種への異動については、業務上の特段の必要性及び当該従業員を異動させるべき特段の合理性があり、かつこれらの点についての十分な説明がなされた場合か、あるいは本人が特に同意した場合を除き、一審被告が一方的に異動を命ずることはできないものと解するのが相当であり、前記認定の一審被告の一般職員の給与体系が事務職系と労務職系の職種で異なっていないこと、事務職系の職種と労務職系の職種とでは採用資格や採用条件が特に異なってはいないこと(弁論の全趣旨)も右就業規則一四条の解釈を左右するものではない。〔中略〕
 一審被告が、これまで事務職系統の職種である医療事務職ないし薬局助手として事務的作業に従事してきた一審原告X1、同X2、同X3に対し、労務職系の職種に属し、労務的作業を職務内容とするナースヘルパーへの配置転換を命ずるについて、客観的に見て、そのような全く職務内容を異にする職種への配置換えを命じなければならない特段の業務上の必要と右一審原告らにこれを命ずる特段の合理性があったとは到底認めるに足りない〔中略〕
〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕
 前認定のとおり、一審被告にあつ(ママ)ては、一時金については、全額人事考課査定の対象とされているが、実際には、勤怠のみが減額査定の事由とされるという運用が行われており、欠勤、遅刻、早退等で支給率が減じられる場合は格別、通常は、従業員は、平均支給率をもって一時金を支給されていることが認められる。
 しかも、前認定の事実及び弁論の全趣旨によれば、一審原告らは、全員一審被告によって解雇され、本件各一時金の支給期(ママ)間中、一審被告により就労を拒絶され、就労が全くできなかったところ、右就労不能は、一審被告の責めに帰すべき事由であって、一審原告らが本件各一時金の支給期(ママ)間中就労していなかったことは、一時金の減額査定の事由にはならないものと解するのが相当であるから、一審被告において、特に一審原告らの不就労が一審被告の就労拒否とは無関係であることを立証しない限り、一審原告らは、一〇〇パーセント就労したものとして、本件各一時金の支給を受ける期待権を有しているものというべきである。