全 情 報

ID番号 07258
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 ゴールドマン・サックス・ジャパン・リミテッド事件
争点
事案概要  「勤務成績または勤務状況が不良でかつ改善の見込みが乏しいかもしくは他人の就業に支障を及ぼす等現職または他の職務に適さない場合」という就業規則上の解雇事由に該当するとしてなされた人事部勤務の女性アドミニストレーション・アシスタントに対する解雇につき、秘密情報の不適切な取扱い等は解雇事由に該当し、解雇権濫用にも当たらないとして有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1998年12月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 10323 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1701号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 3 解雇事由該当性〔中略〕
 認定できる事実は、人事部員として慎重に扱うべき秘密情報等の不適切な取扱い(秘密情報の不用意な伝達、ファイル保管の不適切等)、指示・依頼を受けた事項に対する不適切な対応(取決め違反、間違った回答、回答の遅滞等)、職務上のミスの頻度の高さ(入力ミス等)、遅刻、対人関係のトラブル(上司に対する抗議、同僚への迷惑等)等多岐にわたり、短期間の割に数も多い。これらを総合すれば、平成七年一〇月ころ以降の原告の勤務成績、勤務状況は不良であったといわざるを得ない。同年一一月に実施されたアニュアル・パフォーマンス・エバリュエーションで、職責に求められている水準に達していると評価されたことは、その後の勤務成績、勤務状況についての判断の妨げとはならない。〔中略〕
 原告は、度重なる指摘・注意、書面による警告にもかかわらず、状況を改善しようとせず、かえって、A部長に対し度々大声で抗議するなど、状況を悪化させているのであるから、改善の見込みは乏しいといわざるを得ない。なお、トラブルの相手はA部長であることが多いが、同部長以外の者との間でも発生していることや、指摘した問題点の性質等からすると、他の部署に異動させることで問題が解消するとも認め難い。
 そうすると、原告は、解雇事由を定めた就業規則一三条三項の「勤務成績または勤務状況が不良でかつ改善の見込みが乏しいかもしくは他人の就業に支障を及ぼす等現職または他の職務に適さないと認められた場合」に該当すると認められる。
〔解雇-解雇権の濫用〕
 二 争点2(解雇権濫用の有無)について
 原告の勤務成績、勤務態度が前記のようなものであるところ、被告は、上司であるA部長において度々指摘・注意したが、改善しないことから、書面で警告した上で試用期間(観察期間)を設けて改善の機会を与え、それでも改善しないことから任意の退職を促し、その後に解雇したのであり、このような経緯に照らすと、解雇もやむを得ないといわざるを得ず、解雇権の濫用であるということはできない。