ID番号 | : | 07271 |
事件名 | : | 地位確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本土地建物事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 業務上使用した登記印紙代の立替金について偽造の売渡証明書を利用して、長年にわたって不正に清算要求していたことを理由とする懲戒解雇につき、解雇手続違反もなく、解雇権の濫用には当たらず有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条9号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続 |
裁判年月日 | : | 1999年1月25日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成8年 (ワ) 9870 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1719号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕 原告が立て替えたとしてした登記印紙代の清算請求については、六六件の鑑定書等を作成していることから閲覧謄写のために現実に使用した登記印紙代を含むことは認められるものの、その額の程度に、後半一〇七枚の売渡証明書が真正なものでないことを併せ考慮すれば、少なくとも後半一〇七枚の売渡証明書を添付してした清算請求はこれを不正な請求であったと認めるのが相当である。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕 二 争点2(適正手続違反の有無)について (書証略)によれば、次の事実が認められる。 1 平成七年一〇月二三日の面談において、AとBが原告に不正請求の件を告知し、弁明を求めた。右両名が、原告に登記印紙を売った法務局の者の氏名を教えるように求めたところ、原告は「印紙を買ったのは事実だ。それ以上は相手に迷惑をかけるのでいえない」旨回答し、その他の質問に対しても、「売渡証明書の額面が全て一六〇〇円なのは、登記簿謄本の印紙代が四〇〇円であり、その倍数だからである」「嵯峨出張所ばかりなのは、そこの人が非常に親切にしてくれるので利用するようになったためである」「売渡証明書に日付がない理由は分からない。法務局の中の問題であろう」という弁明を繰り返した。 2 翌二四日の再面談の際も、原告は「三〇万円くらいの印紙をまとめ買いし、額面一六〇〇円の売渡証明書を二〇〇枚近くもらった」という説明をし、その他の説明も前日の内容と全く異なっていた。また、前日二三日の面談を含め、Cの了解を得ていたという弁明は一切なされなかった。 3 同月三〇日、A及びBは再び原告と面談し、自主退職を勧めたが、原告はこれを拒否したため、翌三一日付で解雇するので解雇予告手当を受領するように口頭で通告した。 右認定の事実によれば、被告は、原告に対し、平成七年一〇月二三日、同月二四日、同月三〇日の三回にわたり弁明の機会を与えているから、本件懲戒解雇が、手続的要件を充足することは明かであり、原告の適正手続違反の主張には理由がない。なお、原告本人は、(書証略)の記載内容は事実に反し、原告は面談においてCの同席を求めたが被告に聞き入れられなかった、原告もその面談の様子はメモに記録している旨供述するが、右メモが書証として提出されておらず、右供述は信用できない。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 三 争点3(解雇権の濫用の有無)について 前記認定の事実によれば、原告の行為は、長期間にわたって偽造の売渡証明書を提出して被告に対し不正に少なくとも一七万一二〇〇円の立替金の請求をするという悪質なものであり、被告がその行為を追及した後も不合理な弁解に終始するなど反省の色がみられないから、不正請求の金額が多額とはいえないことを考慮しても、被告のした本件懲戒解雇が著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないとはいえず、解雇権の濫用にはあたらない。 |