ID番号 | : | 07277 |
事件名 | : | 退職金請求事件(本訴)、損害賠償等請求事件(反訴) |
いわゆる事件名 | : | 大器事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 見積価格より一割高の価格で商品を仕入れた従業員に対する退職金不支給につき、右行為は会社の利益に反する背任行為であり、懲戒解雇の意思表示以前に、従業員からの解約告知によって雇用関係が終了した場合でも、退職金不支給を相当とするような懲戒事由があった場合には、退職金を不支給とすることができるとして、その支払請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法24条 労働基準法89条3の2号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限 |
裁判年月日 | : | 1999年1月29日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成9年 (ワ) 12070 平成10年 (ワ) 1536 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例760号61頁/労経速報1725号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕 原告は、Aが出した見積価額で別紙一覧表B記載の商品の仕入が可能であったにも拘わらず、敢えて、その一割高の価額で被告に仕入れさせており、この行為は明らかに、被告の利益に反する背任行為というべきである。 しかも、原告が従前B会社が扱っていた別紙一覧表A記載の商品全てについてAの見積価額の一割高の仕入価額で継続して被告に仕入れさせようとしていたことも明らかであって、原告の右背任行為が発覚することなく経過したとすると、被告の被る損害はさらに増大したものと認められ、まことに悪質で重大な非違行為というほかない。〔中略〕 二 原告の背任行為が退職金不支給事由となるか 右のとおり、原告には、被告が懲戒解雇事由として主張する背任行為の存在が認められ、これらは、被告が懲戒解雇事由として主張する就業規則の前記各法条に該当すると考えられる。 本件では、被告は、退職金不支給の根拠として、被告の退職金規程三条一項が「背信行為など就業規則に反し懲戒処分により解雇する場合は退職金を支給しない」旨規定していることから、平成九年九月になって、原告を平成九年六月末日まで遡って懲戒解雇したと主張し、これに対し、被(ママ)告もまた、懲戒解雇事由の存在を争って懲戒解雇の無効を主張しているところである。 ところで、懲戒解雇は、懲戒権の行使であるとともに雇用関係終了事由であるが、原告が被告に対しかねて同日で退職する旨の意思を表明していたことは当事者間に争いがなく、被告もまた、同日をもって原告との雇用契約を終了させる意思であることは明らかであるから、原被告間の雇用関係は同日をもって終了したものというべきであり、その後に懲戒権を行使するということはあり得ない。 しかし、本来、懲戒解雇事由と退職金不支給事由とは別個であるから、被告の右退職金規程のように退職金不支給事由を懲戒解雇と関係させて規定している場合、その規定の趣旨は、現に従業員を懲戒解雇した場合のみならず、懲戒解雇の意思表示をする前に従業員からの解約告知等によって雇用契約関係が終了した場合でも、当該従業員に退職金不支給を相当とするような懲戒解雇事由が存した場合には退職金を支給しないものであると解することは十分に可能である。 このような観点から本件をみると、前記説示のとおり、原告の前記背任行為は、いずれも悪質かつ重大なものであって、被告に対する背信性の大きさからして、本来懲戒解雇に相当するのみならず、これを理由に退職金不支給とすることも不当ではないと考えられる。 |