ID番号 | : | 07285 |
事件名 | : | 賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東京国際郵便局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 年休申請者が自ら代替勤務者を用意し、また代替勤務者の配置が客観的に可能であった場合に、それにもかかわらずなされた時季変更権の行使が無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 時季変更権 |
裁判年月日 | : | 1999年2月17日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成3年 (ワ) 10085 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | タイムズ1016号141頁/労働判例756号6頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年休-時季変更権〕 労基法三九条四項ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かの判断において、代替勤務者の確保の難易は、その判断の一要素であって、特に、勤務割による勤務体制(本件のような勤務の指定による勤務体制もこれに含まれる。)が採られている事業場の場合には、重要な判断要素であるというべきである。このような勤務体制が採られている事業場において、勤務割における勤務予定日につき年休の時季指定がされた場合に、使用者としての通常の配慮をすれば、代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしなかった結果、代替勤務者が配置されなかったときは、必要配置人員を欠くことをもって事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできない(最高裁昭和六二年七月一〇日第二小法廷判決・民集四一巻五号一二二九頁、最高裁昭和六二年九月二二日第三小法廷判決・裁判集民事一五一号六五七頁、最高裁平成元年七月四日第三小法廷判決・民集四三巻七号七六七頁参照)。 3 右の見地に立って、本件時季変更権の行使の適否について検討すると、前記認定の事実によれば、本件当日の勤務につきAは原告Xの代替勤務を了解しており、かつ、Aが同原告の職務を代行することに支障はなかったのであるから、使用者としての通常の配慮をすれば、勤務の指定を変更してAを原告Xの代替勤務者として配置することが客観的に可能な状況にあったことは明らかである。それにもかかわらず、B課長は、以上の措置を採らないまま、業務に支障が生じることを理由として、原告Xに対し時季変更権を行使したというのであるから、本件時季変更権の行使は、事業の正常な運営を妨げる場合に当たらないのにされた違法なものとして、無効といわなければならない。 被告は、増配置のための出勤要請は拒否するが、年休のための代替勤務者としてなら出勤するというような職員がいることまで予測することは、使用者としての通常の配慮を超えていると主張する。しかし、原告Xは、一〇月二九日本件当日の勤務の指定の変更を申し入れた際、Aから代替勤務の了解を得ている旨B課長に伝えたことは前記判示のとおりであって、使用者としての通常の配慮をすれば、Aの勤務の指定を変更して代替勤務者として配置することが客観的に可能な状況にあったことは否定できないから、時季変更権を行使した後にAが増配置のための出勤要請を拒否したことを理由として、右の配慮を欠いたことを正当化することはできない。 |