ID番号 | : | 07288 |
事件名 | : | 労働契約上の地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 櫟山交通事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働組合の執行委員長である原告が、タクシー会社に対する中傷誹謗したビラを配布したことを理由とする解雇につき、会社の事業の安全性・確実性に対する利用者の信頼と会社の信用に重大な影響を与えるものであり、正当な批判・言論行為とはいえないとして、右解雇が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 名誉・信用失墜 |
裁判年月日 | : | 1999年2月23日 |
裁判所名 | : | 千葉地松戸支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成9年 (ワ) 667 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1705号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-名誉・信用失墜〕 右認定の事実によれば、タクシー事業における始業時点呼は、タクシー業務の安全確保のために必要な絶対条件であり、被告のタクシー事業が公共交通機関としての責務を果していく上で必須の手続であり、運輸規則二二条によっても義務づけられており、旅客は、タクシー会社が正規の認可を受けた会社であり、タクシーの乗務にあたり、始業時点呼の所定の安全確認を行い、かつ、資格を有する乗務員が安全・確実に輸送してくれることを当然の前提に、タクシーを利用するのであって、無資格者がタクシーを運転することは全く予想していないから、タクシー会社が始業時点呼を行わず、そのために無資格者にタクシー乗務をさせていたとすれば、旅客の信頼を失い信用を完全に失墜し経営上深刻かつ重大な影響を被ることになるところ、本件ビラの内容は、読者に被告が無免許運転の乗務員を承知の上で二年間も使用していたかのような誤解を生じさせるおそれがあるものであり、また、本件ビラは、被告が運輸規則に定められた始業時点呼を行わず、組合による一五年間という長期に及ぶ指摘も無視し、そのため本件は起こるべくして起きたもので、被告はタクシー事業を営む当事者としての能力はないと非難し、これを公表したものであって、前認定のとおり、被告は、タクシー業務を営むにあたり、被告の松戸営業所において免許証の確認を含めて始業時点呼を実施してきており、A乗務員がカラーコピー機を利用して極めて精巧な自動車運転免許証を偽造して点呼の際これを提示したため、同人の免許証の偽造と無免許運転を見抜けなかったものであるが、被告がA乗務員の無免許運転を承知の上で同人を営業車に乗務させていたものではないから、原告が本件ビラを広範囲に多数配付して事実に反する事項を公表したことは、被告のタクシー事業の安全性・確実性に対する利用者の信頼と被告の信用に重大な影響を与えるものであり、被告の信用を著しく毀損し、原・被告間の信頼関係を根底から覆す不当なものであって、正当な批判・言論行為であるとは到底いえず、被告が、このような重大な非違行為をした原告との労働契約を維持・継続していくことは不可能であるとして、原告を本件解雇に処したことは、誠にやむを得ないものというべきであり、社会通念上合理性を欠くということはできないから、本件解雇が解雇権の濫用にあたり無効であるとはいえず、また、原告の人格権を侵害する不法行為であるということもできない。 |