ID番号 | : | 07292 |
事件名 | : | 処分無効確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | JR東日本(高崎車掌区・年休)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 使用者が時季変更権の行使をするにあたっては、年休取得のための他の日を指定する必要はないとされた事例。 時季指定権の行使につき、夏季の繁忙期にあたっており、代替者等につき通常考えられる措置が採られており、適法であるとされた事例。 適法な時季変更権の行使にもかかわらず、出勤しなかった者に対する戒告処分が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 時季変更権 |
裁判年月日 | : | 1999年3月11日 |
裁判所名 | : | 前橋地高崎支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成4年 (ワ) 400 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例762号32頁/労経速報1715号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年休-時季変更権〕 一 争点1(他日指定が要件であるか)について 被告が、原告に対し、他日指定することなく七月二三日及び二四日の年休を承認しない旨の意思表示をしたことについては争いがない。 ところで、年次有給休暇は、労働者がその有する休暇日数の範囲内で、具体的な休暇の始期と終期を定めて有給休暇の時期を指定したときは、客観的に労働基準法三九条四項所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしない限り、この指定によって年次有給休暇が成立するもの、すなわち、休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として発生するのであるから、使用者としては、時季変更権の行使として、同法三九条四項所定の事由が存在するということを理由に、当日の年休を承認しないということを示せば、直ちにそれが時季変更権の行使となるというべきである。労働者側からしても、いつでも別の日を年休日として指定すれば足りるのであるから、使用者の側から他日を指定しなければならないと解する理由はない。したがって、原告のこの点に関する主張は採用できない。 二 争点2(事業の正常な運営を妨げる事由の有無)について 前記前提事実及び証拠(〈証拠・人証略〉)によれば、被告は、できる限り多くの者に年休を付与するため、前記前提事実3のような措置をとったが、原告が時季指定権を行使した(年休付与の申込をした)時季は、夏期繁忙期にあたっていたため、二三日について一〇名、二四日について六名に年休を付与するのが限度であったことが認められるから、原告らこれ以外の年休付与申請者に年休を付与すれば、業務(ママ)の正常な運営に支障があったものというべきであり、原告のこの点の主張も採用できない。 なお、原告は、休日出勤をさらに募るべきであったとか、助役や内勤車掌に乗務させることができた、特別改札業務を中止することでまかなえたなどと主張するところ、年休付与申請者のうち何人にこれを付与するかを決定するに当たっては、被告は、年次有給休暇が労働者の権利であることに配慮し、業務(ママ)の正常な運営を妨げない限り、申請者に申請どおりの休暇を付与するように努めるべきことはいうまでもないが、この場合でも、被告は、業務(ママ)の正常な運営を妨げない範囲内で通常考えられる措置をとれば足りるというべきであり、そして前記前提事実からすると、被告は、七月二三日及び二四日の両日の年休付与にあたり、この程度の措置は十分講じているものと解されるから、これ以上の措置をとるべきであったとする原告の主張は失当である。〔中略〕 三 争点3(権利濫用)について 1 原告の主張について (一) 就業規則違反の主張については、就業規則(〈証拠略〉)では、「休日」とは、同規則五五条一号に規定する公休日、同条二号に規定する特別休日及びこれらの代休日を指し、「休日等」とは、右「休日」に加え、同規則五五条三号に規定する調整休日及びその代休を指するものされており(同規則五三条二号、三号)、したがって、同規則六三条により前月の二五日までに明示すべきとされている「休日等」には、年休が含まれないことは明らかであるから、原告の主張は失当である。 (二) 突然の時季変更権の行使だという主張については、時季変更権が行使されたのは七月一八日であるが、証拠(〈人証略〉)によれば、具体的な勤務が定められた旅行命令書兼交番表が公表された七月二〇日の前であったこと、時季変更権の行使を受けた他の者についても、最も早く受けたAが同月一五日であり、その他の者が同月一六日であって、原告に対する時季変更権の行使が特に遅れたということはないことが認められる(〈証拠略〉)から、原告に対する時季変更権の行使が時機を失し、突然であるという原告の主張は採用できない。 (三) 乗務交番表の年休者の欄に一旦原告の氏名が記載された後にBに変更になったとの主張については、そのような事実経過が認められることは前記前提事実記載のとおりであるが、この乗務交番表の記載は、車掌の乗務について決裁権を有するCが、決裁する前の案にすぎないものであるから、原告の氏名がその年休者の欄に記載されたというだけでは原告に対して年休を付与したことにはならないから、この点の原告の主張も失当である。 (四) 年休付与は申し込み順という慣行に反するという主張については、本件全証拠によっても、そのような慣行の存在を認めることはできない。 |