ID番号 | : | 07300 |
事件名 | : | 賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ニシデン事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 被告会社は、原告三名を採用後直ちに海外の子会社に勤務させていたところ、原告三名に解雇通知をしたが、転籍をさせたものであるので解雇通知はまちがいであったとして撤回したところ、原告らが右は転籍では出向であるとして、被告会社に(1)未払賃金、(2)夏季手当、(3)解雇予告手当を請求したのに対し、(1)及び(3)については、本件は転籍ではなく出向であるとしてこれを認容し、(2)については初年度の賞与額が次年度以降も支給することを約していたとは認めがたいとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法24条 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の根拠 配転・出向・転籍・派遣 / 転籍 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権 |
裁判年月日 | : | 1999年3月16日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (ワ) 23569 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例766号53頁/労経速報1711号12頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 三井正信・労働法律旬報1479号48~54頁2000年5月10日 |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の根拠〕 〔配転・出向・転籍・派遣-転籍〕 (一) 出向とは、一般に、労働者が使用者(出向元)の指揮命令下から離れて第三者(出向先)の就労場所においてその指揮命令を受けて労務の給付を行う労働形態のことをいうが、この労働形態においては、労働者が出向元との労働契約を合意解約して出向先との間で新たに労働契約を締結する場合(これを転籍と呼ぶことが多いようである。)もあれば、労働者が出向元との労働契約を合意解約しない場合(これを出向と呼ぶことが多いようである。)もあり、また、労働者が出向元との労働契約を合意解約しない場合でも、労働者が出向先との間で労働契約を締結する場合もあれば、締結しない場合もあるのであって、労働者が出向元の指揮命令下から離れて出向先の就労場所においてその指揮命令を受けて労務の給付を行う労働形態において、労働者と出向元との間及び労働者と出向先との間にそれぞれどのような法律関係が成立しているかについては個別の案件ごとに認定し判断していくほかない。〔中略〕 原告らがA会社で勤務するに当たって被告との間で締結した雇用契約を合意解除したことを認めることはできないのであり、したがって、原告X1が被告に採用された後にB会社を経てA会社で勤務し、原告X2及び同X3が被告に採用された後にA会社で勤務していたのは、いわゆる出向に当たるというべきであり、いわゆる転籍に当たるということはできない。〔中略〕 (一) 未払賃金(未払の月額給与及び夏期手当)について (1) 原告らが主張立証責任を負うところの原告らと被告との間の雇用契約の成立が認められ、被告が主張立証責任を負うところの右の雇用契約の終了が認められないのであるから、被告が原告らの請求に係る未払賃金(未払の月額給与及び夏期手当)の支払を拒むには、A会社への出向に際して原告らと被告との間において原告らの賃金などを負担するのはA会社であるとの合意が成立したこと(右の合意を以下「本件合意」という。)が認められなければならないと解される。なぜなら、原告らと被告との間の雇用契約が存続している以上、被告は原告らとの間の雇用契約に基づいて賃金などを支払う義務を負っているのであり、出向期間中に原告らの賃金などを負担するのが誰であるかは出向に際しての原告らと被告との間の明示的又は黙示的合意の内容によって定まるものであるから、原告らがA会社と雇用契約を締結したというだけでは被告は原告らに対する賃金などの支払義務を当然に免れるわけではなく、出向期間中の原告らの賃金などを負担するのがA会社であることが出向に際しての原告らと被告との間の明示的又は黙示的合意とされて初めて被告は原告らに対する賃金などの支払義務を免れることができるからである。 〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕 (二) 前記第三の一1(六)の事実によれば、原告X2の賞与は初年度の夏期に支払われるべき分が金一万シンガポールドルであり、初年度の冬期に支払われるべき分が金一万シンガポールドルであることが認められるが、原告X2に交付された採用通知書の記載の仕方(前記第三の一1(六))からすると、賞与の支給が初年度限りであるとは考え難いが、特段の事情のない限りは次年度以降も初年度と同一の金額を支給することを約しているとも認め難いのであって、そうすると、右の事実だけでは平成一〇年七月に原告X2に支払われるべき賞与が金一万シンガポールドルであると認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 |