ID番号 | : | 07311 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 全日本海員組合事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 海員組合に雇用され、公用車の運転手として勤務していた労働者が、組合の財政構造の改善と財政の脆弱性を改善するためという理由で公用車が廃止され、それに伴い平成八年八月一日から一年間の依命休職を命じられた後で、休職期間満了により退職とされ、海員組合に対して労働契約上の地位確認等を求めたが、依命休職処分には合理性があったとして棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法627条1項 |
体系項目 | : | 休職 / 休職の終了・満了 休職 / その他の休職 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件 |
裁判年月日 | : | 1999年3月26日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成9年 (ワ) 16414 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1723号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕 ある部門の余剰人員の削減に労働組合としての組織の維持、運営上の必要性があり、かつ、労働組合としての組織の維持、運営上の必要性が労働組合としての組織の維持、運営上の観点から合理性を有すると認められる場合には、余剰人員の削減を目的としてその余剰人員についてする解雇は一応合理性を有するものというべきである。〔中略〕 〔休職-その他の休職〕 被告は原告を被告の運転士としての業務に従事させる目的で被告の運転士として採用したものと認められ、したがって、原告の担当業務は公用車の運転であるというべきである。 右によれば、原告の担当業務は公用車の廃止によって消滅したというべきであるが、他方において、原告はあくまでも公用車の運転を担当する目的で被告に雇用されたのであるから、原告と被告との間で締結された雇用契約は原告が被告に提供すべき労務の種類(原告が被告に提供すべき労務の種類を以下「職種」という)を限定しているのであって、したがって、被告には原告が被告に提供すべき労務の種類を一方的に変更する権限(配転命令権)はないというべきである。 そうすると、原告の担当業務が消滅した以上、原告と被告との間で締結された雇用契約を存続させるべき理由はないというべきであり、公用車を廃止すれば、被告は原告がその担当業務を失ったことを理由に被告との間で締結された雇用契約を打ち切ろうとすることが考えられるのであって、いわば公用車の廃止は原告の失職を招来するものというべきであるところ、被告の財政構造の改善及び被告の財政の脆弱さの改善を図るという意味における被告の財政の健全化を直接の目的として公用車の廃止が行われた以上、公用車の運転を担当していた原告をその担当業務の消滅を理由にそのまま失職させることは右の意味における被告の財政の健全化に資するものということができるから、被告が本件依命休職処分をしたことには合理性があると認められ、したがって、本件依命休職処分については労働組合としての組織の維持、運営上の必要性を肯定することができる。〔中略〕 (ア) 本件依命休職処分は、当面は組織解体の危機に陥る危険があるということはできない被告が被告の財政構造の改善及び被告の財政の脆弱さの改善を図るという意味における財政の健全化を図る目的で行った公用車の廃止の決定に伴って行われた処分であるから、余剰人員の削減の緊急の必要性があるとは認められないのであって、通常は業種の拡大を図ることや今後数年間の自然減を待つことによって余剰人員を吸収すれば余剰人員削減の目的を達成できるのであり、そうすると、そのような方法による余剰人員の吸収が不可能である場合を除いては、目的と手段・結果との間の均衡を欠くということになるように考えられないでもない。 (イ) しかし、被告の財政構造の改善及び被告の財政の脆弱さの改善を図るという意味における被告の財政の健全化を図るためには、正規組合員の増加によって組合費が増えそれによって余剰人員となる原告を吸収すべきであるところ、第四七年度以降も一貫して被告の正規組合員数は減少し続けており、被告が正規組合員を新規に開拓してその数を増加させることは極めて困難な状況に置かれていることからすれば、本件依命休職処分の発令の時点において正規組合員の増加によって公用車の廃止に伴い余剰人員となる原告を吸収することはできなかったというべきである。〔中略〕 本件依命休職処分によって被告の財政構造の改善及び被告の財政の脆弱さの改善を図るという意味における被告の財政の健全化を図ろうとすることと同処分に係る本件依命休職期間の満了による原告の退職との間の均衡が欠けているということできない。 (エ) 以上によれば、本件依命休職処分はその発令の時点において余剰人員の削減の必要性という点については合理性を有するものと認められ、したがって、本件依命休職処分はその発令の時点において解雇権の濫用として無効であるということはできない。〔中略〕 〔休職-休職の終了・満了〕 本件依命休職処分の発令の時点において公用車の運転という担当業務が消滅した原告について被告の組織内において新たに配属すべき適当な配属先がなく、そのため原告と被告との間で締結した雇用契約を一定期間の満了時に終了させることはやむを得ないと認められる。〔中略〕 本件依命休職処分の発令と同処分に係る本件依命休職期間の満了による退職が解雇の実質を有するとすると、単に本件依命休職処分の発令当時において公用車の運転という担当業務が消滅した原告について被告の組織内において新たに配属すべき適当な配属先がなく、そのため原告と被告との間で締結した雇用契約を一定期間の満了時に終了させることはやむを得ないと認められる |