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ID番号 07319
事件名 解雇無効確認等請求事件、損害賠償等反訴請求事件
いわゆる事件名 アサヒコーポレーション事件
争点
事案概要  洋酒輸入・販売等行う会社で洋酒部長であって、輸入洋酒の販売及び保税事務を担当していたX1とその部下であったX2が、税関の立入り検査で未通関商品の数量不足が判明したことに関連して、X1及びX2が洋酒を横領していたとして懲戒解雇されたケースで、X1及びX2がその効力を争うとともに、会社が右懲戒解雇を得意先等に書面で通知したことにつき損害賠償(慰謝料)を求めたことにつき、X1らの横領を認めるに足りる証拠はないとして懲戒解雇を無効とするとともに、慰謝料を認めた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法709条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1999年3月31日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 11085 
平成6年 (ワ) 6372 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴後取下げ)
出典 労働判例767号60頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 2 被告が、原告らの横領によって生じたと主張する在庫不足については、実際に在庫不足が存在したかどうかも疑わしく、また、仮に在庫不足が存在したとしても、これが原告らの商品の横領によるものであると認めるに足りる証拠はないから、その余の点について判断するまでもなく、原告らの横領を前提とする被告の主張は失当である。〔中略〕
 被告の、原告らの横領を理由とする懲戒解雇の主張は、前記のとおり原告らの横領の事実が証拠上認められないのであるから、懲戒解雇事由の証明がなく、理由がない。〔中略〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 原告X1が保税事務を怠っていたことについては、営業担当者が保税担当を兼ねるという被告の社内体制にも問題があったというべきであるし、被告も原告X1のかかる怠慢を黙認していたともいい得るのであって、ひとり原告X1のみを責めることはできない。右のような経緯に鑑みれば、原告X1の職務上の義務違反行為は、懲戒解雇の要件を定めた就業規則六八条一四号には該当せず、減給、出勤停止、昇給停止及び降職の要件を定めた六七条七号又は九号に該当するに過ぎないというべきである。〔中略〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 前記のとおり本件懲戒解雇は無効であるところ、被告は、現物在庫の不足が約四〇〇〇万円存在するとの調査に基づき、これらが原告らの横領によるものであるとして、本件懲戒解雇に及んだものである。しかしながら、被告のそのような判断が、綿密な調査に基づいて行われたものでないことは、本件訴訟における被告の損害額の主張が、当初の四〇〇〇万円から、口頭弁論終結時においては、五八六万円余りに減少していることからも明らかであって、懲戒解雇が労働者の賃金収入の途を奪うのみならず、再就職等にも少なからず影響を与える重大な処分であることに鑑みると、このように軽率にされた懲戒解雇は、不法行為をも構成するというべきである。
 また、(証拠略)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、原告らを懲戒解雇した事実を、得意先等に書面で通知したことが認められ、本件懲戒解雇が無効である以上、これは、原告らの名誉を毀損する不法行為に該当するというべきである。