ID番号 | : | 07323 |
事件名 | : | 退職金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東京ゼネラル(退職金)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 仙台支店長であった従業員が勝手に借上社宅から転居して転居先を隠して所在を明らかにしなかったこと、会社に無断で職場を離脱し職務を放棄したこと、会社からの連絡・出社の指示に従わず、業務の引継ぎもしなかった等として会社から懲戒解雇されたことに対して、懲戒解雇の意思表示がなされる前に、すでに、酒席で退職の意向を明らかにしており退職の意思表示はなされていた、退職届の所在を知らせた後会社を退出し、それが会社において発見され、それが読み上げられ、退職願いを受領する権限を有する上司がその内容を知った時点で退職の意思表示は会社に到達しており、その後の懲戒解雇は法的意味をもたないとして、退職金等を請求して、認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条 労働基準法89条1項3号の2 労働基準法89条1項9号 労働基準法2章 民法627条1項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限 退職 / 任意退職 |
裁判年月日 | : | 1999年4月19日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成8年 (ワ) 20238 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | 労働判例768号62頁/労経速報1721号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔退職-任意退職〕 本件は、被告を退職したと主張する原告が、被告の退職金の定めに基づき、被告に対して退職金(退職一時金)の請求をしたところ、被告が、原告の退職の意思表示の効果の発生前に懲戒解雇をしたから退職金請求権がないと主張してこれを争っている事案である。〔中略〕 (1) 原告は、仙台支店長という重要な職責にあったにもかかわらず、平成八年八月一三日午前一一時半ころ、勝手に仙台支店から退出するとともに借上社宅から転居して転居先を隠して所在を明らかにせず、同日以降、被告に無断で職場を離脱して職務を放棄し、かつ、被告からの連絡、出社指示等に一切従わなかった。しかも、原告は、業務の引継ぎをしなかったので、支店長の目標設定に基づき運営される支店業務に著しい支障が生じ、顧客との対応にも問題が起こり、また、支店従業員に不安、動揺を及ぼし、その志気に著しい悪影響を与えたので、被告は、その対応に奔命させられた。 (2) このような原告の行為は、就業規則四一条(3)、(5)、(10)、(12)に該当し、その情状は極めて悪質であるので、被告は、就業規則四二条(4)に基づき、原告に対して懲戒解雇をすることを決定し、同月二六日付けで本件懲戒解雇をしたものである。 原告は、同月一三日、自己が使用していた机の引き出しの中に本件退職届を入れて被告仙台支店を退出したものであるところ、退出前にA係長に本件退職届の所在を知らせているのは、退出後にそれが被告従業員らによって容易に発見されて、速やかに被告に到達することを企図したことによるものと見ることができる。 そして、同日、B副長が、原告の使用していた机の引き出しの中から本件退職届を発見し、電話口で本件退職届の内容を読み上げたことによって、同日午後五時過ぎころ、原告の退職願の受領権限を有する同部長が本件退職届の内容を知ったものであるから、この時点で、原告の退職の意思表示は被告に到達したものと認めることができ、したがって、就業規則一九条(1)の定めによって、同日の翌日から起算して一四日後である同月二七日の経過により、原告の退職の効果が発生したものというべきである(本件退職届は、その標題、文言等から見て、就業規則一九条(1)にいう「退職願」に当たるものと認められるから、それが被告に到達した日から右就業規則の定める期間の経過により効果が発生するものと解することに妨げはない。)。〔中略〕 〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕 原告は、就業規則三八条、給与規程二九条本文、三〇条、退職年金規約一七条一項本文(原告が退職年金受給資格を取得しないで退職したことは、弁論の全趣旨によって認めることができる。)、二項、三四条二項の定めにより、被告に対して退職金(退職一時金)請求権を取得したことが明らかで、同月二八日原告に到達した本件懲戒解雇は、既に退職の効果が発生し、被告の従業員たる身分を喪失した後にされたものということができるから、給与規程三二条本文、退職年金規約三三条の定めの下においては、争点2について判断するまでもなく、原告の退職金請求権の取得に消長を来すものとはいえない。 |