全 情 報

ID番号 07335
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 大田原重機事件
争点
事案概要  重機会社で勤務していた労働者が賃金を減額されたためやむを得ず退職したのであるから、会社は解雇予告手当を払う義務があり、また、会社で勤務していたときに割増賃金が支払われなかった時間があるとして、右割増賃金及び付加金を請求していたケースで、労働者は自らの意思で退職したもので、会社は解雇予告手当を払う義務はないが、割増賃金が支払われなかった時間があったとして、請求が一部認容された事例。
参照法条 労働基準法37条
労働基準法20条
労働基準法26条
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定方法
解雇(民事) / 解雇予告手当 / 解雇予告手当請求権
賃金(民事) / 休業手当
裁判年月日 1999年5月21日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 24138 
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労経速報1716号17頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇予告手当-解雇予告手当請求権〕
 1 原告が平成九年四月二六日被告を退職した事実は当事者間に争いがない。
 2 原告本人尋問の結果によれば、原告は被告に不満を持ち、自らの意思で退職したものであると認められる。
 3 労働基準法二〇条は、突然の解雇による労働者の生活の困窮を緩和する趣旨の規定であるから、自主退職した場合に適用がないことは明らかである。〔中略〕
〔賃金-休業手当〕
 労働基準法二六条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、平均賃金の一〇〇分の六〇以上の休業手当を支払うことを使用者に義務づけている。そして、平均賃金の算定方法については、同法一二条が定めているところ、原告の賃金は、月払いの日給制であるから、平均賃金は、同条一項本文により算定した額と同項ただし書一号により算定した額のいずれか高いほうということになり、休業手当の額はその平均賃金の一〇〇分の六〇ということになる(通常の一日分の賃金の一〇〇分の六〇ではない)。〔中略〕
〔賃金-割増賃金-割増賃金の算定方法〕
 被告が、後記七の賃金減額の前後を問わず、一日八時間の法定労働時間(所定労働時間も同じ)を超える労働に対し、一時間当たり、法定労働時間八時間の労働に対する賃金の八分の一の割合による賃金(法定労働時間内の労働に対する一時間当たりの賃金と同額)しか支払ってこなかったものであることは、弁論の全趣旨により明らかである。このような定めは、たとえ合意があったとしても、強行法規である労働基準法三七条に違反するものであるから、無効であり、被告には、法定労働時間内の労働に対する賃金の二割五分以上の割増賃金を支払う義務がある。