全 情 報

ID番号 07342
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 神奈川県立外語短期大学(セクシュアルハラスメント)事件
争点
事案概要  公立A外語短期大学の女性教員が県教育長宛てに出した書簡のなかで指摘した、男性教員のセクシュアルハラスメントの事実について、セクシュアルハラスメントを指摘された男性教員がその事実は事実無根であり、社会的評価を低下させ、名誉を毀損するものであるとして、損害賠償を請求したケースで、名誉を毀損するまでとはいえないとして請求を棄却した原審判決が、一部変更され、名誉毀損が認められ、損害賠償請求が一部認容された事例。
参照法条 男女雇用機会均等法21条
民法709条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント
裁判年月日 1999年6月8日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ネ) 1781 
裁判結果 一部変更、一部棄却(上告)
出典 労働判例770号129頁
審級関係 一審/07209/横浜地川崎支/平10. 3.20/平成6年(ワ)707号
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント〕
 以上によれば、本件書簡において指摘する控訴人のセクハラの事実については、これを真実であると認めることはできない(なお、仮に、当事者間のやりとりである「キスさせろ」と強要したとの記載部分を除外したとしても、摘示事実の主要部分について真実性の証明がないことに変わりはない。)。〔中略〕
 被控訴人はB教育長宛に送付した本件書簡のセクハラに関する記事により控訴人の社会的評価を低下させ、名誉を毀損したものというべきであり、控訴人は外語短大の教授の地位にあったものであるところ、前記のとおり右記事の記載内容は控訴人がセクハラを常態とし教育者としての資格がないという趣旨のものであったこと、これにより控訴人は任命権者である教育長から第三者立会の上で右記事記載の事実について究明を受けたこと等の諸事情を総合勘案すると、被控訴人の右名誉毀損の不法行為によって控訴人が被った精神的損害に対する慰謝料としては五〇万円と認めるのが相当である。〔中略〕
 被控訴人は右キス発言により控訴人の社会的評価を低下させ、その名誉を毀損したものというべきであるが、控訴人が前記のとおり外語短大の教授の地位にあるものであることや右発言が教授会の席でなされたものであることのほか、被控訴人の右発言は、前記認定のとおりいわば口論のような多少感情的なやりとりになったなかで、控訴人に追及され、具体的な行為の特定を求められたのに対する応答の形でなされたものであり、結局被控訴人が手元に資料がないので答えられない旨回答し、それ以上の具体的な摘示も追及もされることなく終わったものであること等の諸事情を勘案すれば、被控訴人の右名誉毀損の不法行為によって控訴人が被った精神的損害に対する慰謝料としては一〇万円と認めるのが相当である。