全 情 報

ID番号 07343
事件名 賃金請求上告事件
いわゆる事件名 生活協同組合メセタ事件
争点
事案概要  生協に勤務していた第一審原告が、別の生協へ移籍することになったが採用拒否の通知を受けたため、元の生協を相手として雇用契約の存続確認・賃金請求をしている間に、当該生協が経営破綻に陥ったことで整理解雇され、本訴において右雇用関係を争っていた期間におけるベースアップ等による昇給額との差額、賞与の支払を求めていたケースで、第一審原告が、先取特権を有する破産債権を有するか否かが争われ、本件解雇の効力につき審理判断することなく、破産債権の全額につき一般の優先権を認めた原審の判断には民法三〇八条、破産法四一条の解釈適用を誤った違法があるとして破棄・差戻しされた事例。
参照法条 民法308条
破産法41条
労働基準法2章
体系項目 賃金(民事) / 賃金・退職年金と争訟
裁判年月日 1999年6月11日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (オ) 894 
裁判結果 原判決破棄、差戻(差戻)
出典 労働判例762号18頁
審級関係 控訴審/07207/東京高/平10. 1.22/平成8年(ネ)5485号
評釈論文 井上二郎・法律時報72巻3号110~113頁2000年3月
判決理由 〔賃金-賃金・退職年金と争訟〕
 民法は、雇人の給料債権に基づく一般の先取特権は雇人が受けるべき最後の六箇月間の給料につき存在する旨を定め(三〇六条二号、三〇八条)、破産法は、一般の先取特権のある破産債権を優先権のある破産債権とする(三九条)が、その優先権が一定の期間内の債権額につき存する場合においては、その期間は破産宣告の時よりさかのぼって計算することとしている(四一条)。ところで、記録によれば、A生協は、被上告人に対し、平成六年八月二〇日付けで解雇する旨の意思表示(以下「本件解雇」という。)をしたところ、被上告人は、本件解雇の効力を争って、雇用関係存在確認及び解雇された日の翌日以降の賃金等の支払を求める別件訴訟を提起し、右訴訟は現に係属中であるというのである。そうすると、被上告人は、本件解雇が有効である場合には、本件破産債権のうち、本件解雇の時からさかのぼって六箇月間に支払われるべきであった給料債権につき一般の先取特権を有することになり(最高裁昭和四三年(オ)第一〇九五号同四四年九月二日第三小法廷判決・民集二三巻九号一六四一頁参照)、他方、本件解雇が無効である場合には、破産宣告時からさかのぼって六箇月間に支払われるべきであった給料債権につき一般の先取特権を有することになる。したがって、被上告人が、本件破産債権につき一般の先取特権を有するかどうか、また、本件破産債権のうちいつからいつまでの間に発生した破産債権につき右先取特権を有するのかを確定するためには、本件解雇の効力について判断する必要があるものというべきである。
 四 以上と異なり、本件解雇の効力について審理判断をすることなく、本件破産債権の全額が一般の優先権のある破産債権であるとした原審の判断には、民法三〇八条、破産法四一条の解釈適用を誤った違法があり、ひいては審理不尽の違法があるものといわなければならず、右の違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は、この趣旨をいう限度で理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件解雇の効力等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すのが相当である。