ID番号 | : | 07353 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 博報堂事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 広告代理店の支社に勤務していた者が、現実には行っていない業務の請求書を取引先から提出させて会社から支払を受け着服したこと、個人の旅行費用などを出張費用に含ませることにより会社から金銭を詐取した等の不正行為により解雇され、解雇を無効として争ったケースで、本件の非違の程度はきわめて大きく解雇は解雇権濫用に当たらないとして損害賠償請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為 |
裁判年月日 | : | 1999年6月29日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成9年 (ワ) 20288 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例768号18頁/労経速報1720号17頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕 原告は、A会社と共謀して、現実には行っていない「九一年Bトーナメント・パンフレット制作」の業務の請求書を同社から被告あてに提出させ、A会社に被告から支払を受けさせ、その金員の内金一四七万円をA会社から受け取ってこれを着服していたというのであり、また、被告がA会社に支払った本件海外視察旅行の費用には原告が個人で旅行した分として合計金一三七万九五三六円及び二重取りした分として合計金一八万九〇〇〇円が含まれていたというのであって、これらが本件就業規則六九条二号にいう「業務上の地位を利用して、不当に私利をはかった場合」及び同条三号にいう「故意または重大な過失により、会社に著しい損害を与えた場合」に当たることは明らかであるというべきである。 そして、原告がBトーナメントの件で着服した金員の金額は金一四七万円と多いこと、原告が金員の着服の発覚を防ぐために行った経費の付け替えによって被告は信用問題を招来しかねない状況に置かれることになったのであって、原告が行った金員の着服はこれを隠ぺいするために執られた措置も含めて考えれば、その非違の程度は極めて大きいというべきであること、原告が個人で旅行した費用を本件海外視察旅行の経費として計上した分の合計は金一三七万九五三六円で、原告が本件海外視察旅行の経費から二重取りした分は金一八万九〇〇〇円で、その合計は金一五六万八五三六円と多いこと、原告が個人で旅行した費用を本件海外視察旅行の経費として計上したり本件海外視察旅行の経費から二重取りしたことによって、被告は同額の損害を被ったこと、原告はBトーナメントの件で金員を着服したことが発覚するのを防ぐために関係者に虚偽の請求書や領収書を作成させてこれを監査室に提出したが、監査室から提出した請求書や領収書が虚偽であり原告の説明が真実ではないことを指摘されるや、原告は新たな言い訳を主張し始め、関係者に指示してその言い訳に沿う虚偽の請求書や領収書を作成させてこれを監査室に提出するということを繰り返しており、監査室から新たな言い訳について真実でないことを指摘されても、原告はBトーナメントの件で金員を着服したことを認めようとはしなかったのであって、このように原告にはしんしに反省するという態度が全く見られないのであり、このような態度の原告をこのまま被告の従業員として雇用し続ければ原告が今後も同様の行為を繰り返すであろうという懸念はおよそ全く払拭できないのであって、被告としては今後も原告を被告の従業員として雇用し続けることはできないというべきであること、以上の点に照らせば、那覇支社在任中の原告が那覇支社の売上げに相当に貢献していたこと(前記第三の一1(八))を勘案しても、被告が原告との雇用契約を打ち切るという選択をすることが原告に対する懲戒処分として重きに失するということはできないのであって、本件解雇が解雇権の濫用に当たるということはできない。 そうすると、本件解雇が違法であるということはできず、本件解雇が不法行為を構成する余地はないというべきである。 |