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ID番号 07354
事件名 雇用契約存在確認等請求事件
いわゆる事件名 福住商事事件
争点
事案概要  マンションを所有しその賃貸などを業とする会社でマンションの管理業務等を行ってきた者とその息子が、マンションの管理業務委託を解除する旨の通知を受け、支払を受けられなくなったことにつき、雇用契約の存続の確認と未払い分の賃金を請求したケースで、雇用契約の存続を認めることはできないとして請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法9条
民法623条
体系項目 労働契約(民事) / 成立
裁判年月日 1999年6月30日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 4592 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例774号63頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-成立〕
 原告Xは、昭和五五年に被告会社から金員支給を受けるようになったのは雇用契約を締結したからであり、右金員は賃金であると主張し、本人尋問でこれに沿う供述をするほか、陳述書(〈証拠略〉)にも同旨を記載している。〔中略〕
 しかしながら、まず、原告Xのそれまでの奉仕といっても、その都度、依頼を受けて種々雑多な事務処理等に携わってきたものであり、Aらの家事使用人として継続的に労務を提供してきたものではない。原告Xに被告会社から金員が支給されるようになってからも、原告X自身は、当時、他に歯科技工士という本業があり、原告Xが提供すべき労務や拘束時間などの取決めがなされたわけでもなく、従前同様、必要に応じてAらから依頼を受けるなどして不動産管理の事務処理等に当たってきたものに過ぎない。〔中略〕
 これらに加え、被告会社内部のこととはいえ、原告Xに支給する金員を役員報酬として処理していたことや、平成五年に至るまで支給額の増額がなかったことなどをを総合考慮すると、被告会社が原告Xに支給していた金員は、被告会社の業務とB家の個人名義の不動産の管理などを厳密に区別することなく、原告Xが、これらB家に関わる資産管理その他の事務処理に関して、必要に応じて被告Yらの依頼を受け、種々の奉仕をすることに対する対価として支給されるようになったものであって、便宜上、被告会社からの役員報酬として会計処理されてきたと解するのが最も事態に適しており(強いていえば、準委任契約と言うべきであろう)、そうすると、原告Xと被告会社との間には、原告Xが、被告会社代表者の指揮命令のもとで継続的に被告会社の労務に服するという雇用契約が締結され、これ(ママ)基づいて被告会社から原告Xに対し、賃金として金員が支給されてきたものとは認め難い。
 よって、原告Xの請求は理由がない。