ID番号 | : | 07373 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分命令申立事件 |
いわゆる事件名 | : | ユリヤ商事事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 靴及び装身具の販売等を業とする会社で販売職として雇用されていた者が、勤務成績不良、会社と同僚を誹謗中傷した等として解雇され、その効力を争って地位保全等の仮処分を申し立てたケースで、会社が解雇の事由として挙げたのは就業規則の解雇事由に当たらないか、解雇事由とすることができないものであるとして、申立てが認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 解雇(民事) / 解雇事由 / 会社批判 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1999年8月11日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成11年 (ヨ) 10056 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部却下 |
出典 | : | 労経速報1718号19頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 債務者が債権者の販売職不適格をいう部分は、接客上の失態、上司、同僚との対人関係における協調性の欠如、販売職としての技量の欠如、販売実績の不足を挙げるのであるが、接客上の失態としていうところは、店内を走りまわる子供を睨み付けたとか、商品が売れなかったときに不機嫌な態度をとるといった程度の事柄であって、解雇事由となるほどの事柄ではない。〔中略〕 〔解雇-解雇事由-会社批判〕 債務者と同僚を中傷誹謗したという部分は、債権者が雑誌の取材に応じたことをいうのであるが、(書証略)によれば、債権者が取材に応じたのは、現在の企業におけるいじめやリストラ問題を社会に告発し、引いては組合活動に理解を得るという組合の方針に基づき、その依頼によるものであり、債権者としても、社会に労働現場の実態を知ってもらい、読者が少しでもいじめやリストラ問題を考えてくれたらとの思いにより、しかも、債務者の会社名、実名は出さないことを条件としたものであること、記事は、債権者の説明に基づく部分が多くを占め、その内容は債権者の本件における主張と概ね同じであるものの、記事自体は雑誌記者の判断によって掲載されたものであること〔中略〕等を記載している。右のAは債権者をさすものと推認できるが、債権者が、三番街北リーガル店において、Bから暴言を受け、ときには粗暴な行為を受けたこと、プチ・シャンゼリゼ店においては、Cから嫌がらせを受け、暴力を受けたこと、千里店では、Dから嫌がらせを受けたこと等は前述のとおりであり、また、(書証略)によれば、Bは、就業規則に定められた休憩時間を与えないといった扱いをしていたこと、債権者が、閉店する店舗の売り尽くしを担当させられ、リストラ要員と感じたこと、泉の広場店では、営業方針等を巡ってEと円滑を欠き、降格となったことの各事実を一応求めることができる。 ところで、労働組合の組合員が、組合活動として、職場環境等の労働問題について社会の理解を得るために、その実態を公表したり、意見を述べることは、特段の事情がないかぎり、正当な組合活動に含まれるものであり、これによって使用者が不利益を被ることがあるとしても、これをもってその労働者を解雇したり、不利益に扱うことは許されないというべきである。これを本件についてみるに、債権者が取材に応じたのは、組合の方針に基づくもので、組合活動の一環ということができ、取材に応じた内容は、概ね職場環境等の労働問題に限定されており、また、その内容も、疎明される事実と大きく異なるものではないことからすれば、債権者が雑誌の取材に応じたことは、正当な組合活動の範囲に止まるもので、債務者はこれを解雇事由とすることはできないというべきである。〔中略〕 〔解雇-解雇権の濫用〕 債務者主張の解雇事由は、いずれもその就業規則の解雇事由にあたらないか、解雇事由とすることができないものであり、本件解雇は、解雇権の濫用として無効である。 |