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ID番号 07380
事件名 賃金請求事件(本訴)、損害賠償請求事件(反訴)
いわゆる事件名 仁成会(串田病院)事件
争点
事案概要  病院の受付け・医療事務に従事していた原告X1が、所定労働時間を超える残業や休日勤務に対する割増賃金及び付加金の支払を、また、同病院でリハビリ治療に従事していた原告X2が、リハビリ治療の際の過失によって入院患者に負傷(骨折)を負わせたとしてなされた調整手当の減額及び定期昇給、賞与の不支給ないし減額に合理性がないとして不支給分の支払を求めたケースで、その請求が一部認容された事例。
参照法条 労働基準法37条
労働基準法114条
労働基準法11条
労働基準法3章
民法709条
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務
雑則(民事) / 附加金
賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働者の損害賠償義務
裁判年月日 1999年9月8日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 6891 
平成10年 (ワ) 7859 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例775号43頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-割増賃金-支払い義務〕
 労働基準法は、法定の労働時間を超える時間外労働や法定休日の労働に対しては割増賃金を支給すべきことを規定しており、右が強行法規であることからすると、これに反する慣行を認める余地はない。
 また、被告では給与規程によって、所定労働時間を超える勤務に対して一定割合の時間外手当を支給することを定めているし、給与規程には、従業員が休日に勤務した場合の割増賃金に関する定めはないが、弁論の全趣旨からして、従前は、従業員が法定休日以外の休日に勤務した場合、時間外勤務に対すると同率の割増賃金が支給されてきたものと認められ、これらは同原告と被告との労働契約の内容となっているものであるから、被告が、一方的に代休処理を強制して時間外手当の支給義務を免れることは許されないというべきである。〔中略〕
〔雑則-附加金〕
 原告X1は、平成九年五月二一日から平成一一年一月二〇日までの未払賃金について付加金の支払をも求めているところ、被告に付加金の支払を免除しなければならないような特段の事情は認められないから、右期間の未払賃金一一七万五九八四円と同額の付加金の支払を命ずることとする。
〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕
 定期昇給や賞与については、その支給基準や支給額、昇給額について当事者間で合意がなされたと認めるに足る的確な証拠はなく、就業規則その他においても確定的な支給率や昇給額が定めれ(ママ)ているものではないから、被告が原告X2のみ定期昇給をさせず、また、本来の支給額より低額の賞与しか支給しなかったからといって、原告X2が、その定期昇給や賞与についての差額を未払賃金として当然に請求できるというものではないが、本件では、従前から定期昇給については定期に一律昇給とされ、また、賞与についても勤怠がない限り定率で算定した額の支給がなされてきていたというのであり(争いがない)、原告以外に異なる扱いがされた例はなく、このような従前からの経緯に照らすと、定額の定期昇給や定率で算定した賞与の支給は慣行となっていたものというべきである。〔中略〕
 そうすると、原告X2も他の従業員同様の定期昇給や同率の賞与の支給を受けるべき権利を有するものと認められ、被告が昇給させなかったり、減額したとして支給しなかった額については、賃金の一部未払というべきである。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働者の損害賠償義務〕
 以上を総合すると、原告X2のリハビリ治療が本件骨折の原因となった可能性は否定できないものの、未だ、これを認めるには足りないというべきである。
 そうすると、本件骨折が原告X2の過失によるものであると主張して損害賠償を求める被告の請求は理由がない。