ID番号 | : | 07387 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ケイ・エー・ピー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | レストランの従業員(マネージャー)であった原告が、会社の収益の点からきわめて重要な業務である週末の結婚披露のパーティーの挙行当日、マネージャーとしての地位にありながら、部下の従業員に準備を任せきりにし、さしたる理由もなく欠勤したこと、レストランの人気料理であったピザをやめることを安易に決めたことなど勤務成績不良を理由に解雇され、損害を被ったとして損害賠償を請求したケースで、右理由は相当なものであり解雇は有効であったとして請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 労働基準法20条1項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力 |
裁判年月日 | : | 1999年9月29日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (ワ) 7187 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労経速報1715号12頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 (1) 被告の収益の確保の点で極めて重要な業務である週末の結婚披露パーティの挙行当日、マネージャーという地位に就きながら、二度にわたって、部下の従業員らに準備を任せきりにして、さしたる理由もなく欠勤してしまったこと(前記1(一)の事実)、(2) 被告代表者がオーストリア人であることから、営業政策上、被告が非常に重要視していたオーストリア政府関係者のクリスマスパーティの予約を、接客上厳に慎むべきものであることが明らかな居丈高な発言によって破棄するに至らせ、オーストリア政府関係者の来店をしばらく途絶えさせたこと(同(二)の事実)、(3) 被告の許諾を受けずに本件レストランの店名を変更することを企図し、本件レストランの看板・案内板等にビニールテープを無造作に貼り付けて本件レストランの店名を覆って見えなくするという挙に出て、本件レストランが倒産したか、そうでなくとも間もなく閉鎖するかのような好ましくない印象を与えたこと(同(三)の事実)、(4) 本件レストランのピザ料理は、多くの来客が好んで注文する人気料理であったのに、ピザ料理を止めることを安易に決め、あまつさえ、被告の許諾を受けずに高価なピザ用特製オーブンを廃棄処分にしたこと(同(四)の事実)が認められるのであって、これらの事実によれば、原告には、被告の就業規則二二条一項〔3〕号にいう「勤務成績が不良で就業に適しないと認められたとき」及び同項〔4〕号にいう「前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき」のいずれにも該当する事由があるものということができる。 〔解雇-労基法20条違反の解雇の効力〕 本件解雇は、三〇日の予告期間を置かず、即時解雇の趣旨でされたことが被告の主張自体から明らかであるが、この場合には三〇日分の平均賃金(いわゆる予告手当)を支払わなければならないものとされている(就業規則二二条一項。なお、労働基準法二〇条一項参照)。そして、被告が本件解雇に当たって原告に対して右予告手当を支払ったことを認めるに足りる証拠はないが(被告は、本件解雇に当たり、原告居住の賃借アパートの権利金・敷金の立替金返還請求権と対等額で相殺することによって、一か月の給与相当額を原告に支払った旨主張するが、たとい被告が原告に対して右のような債権を有していたとしても、労働基準法二四条一項所定の直接払の原則に照らし、被告主張のごとき一方的な相殺の意思表示によっては、賃金債務の弁済の効果を生じさせることはできない)、弁論の全趣旨によれば、被告は即時解雇に固執する趣旨ではないことが認められるから、本件解雇は、それが行われた平成九年一二月二二日の翌日から起算して三〇日を経過した平成一〇年一月二二日に効力を生じたものと認められる。 |