全 情 報

ID番号 07421
事件名 出勤停止処分無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 豊和運輸事件
争点
事案概要  運送会社Yのトラック運転手Xが、腰痛で一週間欠勤したことを理由に解雇処分を受けたため、組合を結成し、分会長に選出されたところ、その後Xの地位保全仮処分請求において和解が成立し復職したが、Yから前記欠勤が「ずる休み」であったことが判明したとして、相応の懲戒処分を決定するまで自宅待機命令がなされ(その間においてほかの組合員は全て脱退)、その後三日間の出勤停止処分を受けたうえ、長距離トラック運送業務から外され清掃作業等を命じられたことから、(1)出勤停止処分の無効確認及び右期間中の賃金支払、(2)長距離運転業務を外されていた期間の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償、(3)一連の不当労働行為に基づく損害賠償を請求したケースの控訴審で、(1)については、Xに対する解雇処分を契機として組合が結成されたことに衝撃を受けたYが分会長に選出されたXを嫌悪し、その影響力を排除しようとの意図の下で行なわれたものであり、懲戒権の濫用で無効であるとし、請求を認容、(2)については、長距離トラック運転手という職種は存在しないとして請求を棄却した原審の判断が支持され、(3)については、原審で認容された慰藉料の額が増額されてXの附帯控訴が認容され、Yの控訴が棄却された事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働組合法7条1号
民法709条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1998年12月24日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ネ) 995 
平成10年 (ネ) 1541 
裁判結果 棄却(995号)、一部認容、一部棄却(1541号)(確定)
出典 労働判例761号105頁
審級関係 一審/奈良地/平10. 3.25/平成8年(ワ)444号
評釈論文
判決理由  (一) 控訴人の業務内容は、大別すると一般貨物運送業務と引っ越しサービス業務とに分類され、控訴人に勤務するトラック運転手は、一般貨物運送業務に従事しながら引っ越しサービス業務に従事することもある。被控訴人の主張するような長距離トラック運転手という職種はなく、ただ、トラック運転手のうち、月所定労働期間中の片道の走行距離が三〇〇キロメートルを超える運送業務に五回以上従事した者については、二万円の長距離手当の受給資格が認められているにすぎない。
 なお、被控訴人は、平成七年一一月三日付けで、遠隔地の運送業務の発注荷主であるA株式会社から出入禁止措置を受けていたから、解雇処分前の業務内容としても、長距離手当の受給資格がある遠隔地のトラック運送ではなく、近・中距離の運送業務に従事していたものである。
 被控訴人は、本件出勤停止期間経過後である平成八年三月二三日以降、長距離運送業務に従事できないことによって、毎月九万円宛の損害を被っているものと認められ、すでに平成八年三月二三日から二六か月以上が経過しているのであるから、被控訴人が被った損害は、被控訴人が主張する九万円の二六か月分の二三四万円を超えることは明らかである。
 二 よって、被控訴人の請求(当審において減縮された請求)は、(1)本件出勤停止処分の無効確認並びに出勤停止期間中の賃金四万〇一三六円及びこれに対する履行期限後である平成八年一〇月一六日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払、(2)不法行為に基づく損害賠償金二八四万円(給料減少分相当額二三四万円と慰謝料五〇万円の合計額)及びうち慰謝料五〇万円に対する損害発生後である平成九年一二月三日(原審口頭弁論終結の日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める限度で理由があるから、その限度で認容すべきであるが、その余の請求は理由がないから、棄却すべきである。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 当裁判所は、被控訴人の、〔1〕本件出勤停止処分の無効確認及びこれを前提とした労働契約に基づく賃金請求は理由があり、〔2〕控訴人が、被控訴人を長距離運送業務から違法に排除したことなどの不法行為に基づく損害賠償請求は、給料減少分相当額二三四万円及び慰謝料請求のうち五〇万円の支払を求める限度で理由があるから、その限度で認容し、その余は理由がないから、棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほか、原判決の事実及び理由第四 争点に対する判断(原判決二二頁八行目から同四七頁四行目まで)のとおりであるから、これを引用する。