ID番号 | : | 07437 |
事件名 | : | 従業員地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | アラウン事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | コンピューター部品運送、在庫管理、故障受付等を業とする会社Yで、二四時間体制の職場で電話による故障受付業務に従事していた労働者Xが、約一年の間に合計一か月分について病気欠勤し、その後声帯炎、慢性咽喉頭炎で通院したとの診断書を提出した後も欠勤を継続したことから、その三か月後、就業規則により休職扱いとされ、休職期間満了一週間前には、復職しなければ退職となる旨の通知を受けて復職したが、その後約二か月半の間に欠勤日が勤務日の三分の一である一二日にも及び、更にXは勤務割表が作成された後に申請して多くの年休を取得していたことから、Xが勤務できないことを見込んでYにあらかじめ増員した人員配備をさせる必要性を生じさせていたことから、就業規則の規定に基づき、勤務不良で改善の見込みがないことを理由に解雇されたため、右解雇の無効を主張して労働契約上の地位確認及び賃金の支払を請求したケースで、Xを勤怠不良で改善の見込みがなく、かつ業務遂行能力又は能率が著しく劣り、上達の見込みがないと判断した本件解雇は相当であるとして請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 |
裁判年月日 | : | 1999年7月9日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (ワ) 12363 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1730号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 原告は休職前にも病気欠勤や継続的な欠勤が少なくなかったし、休暇として労働義務が免除された日を除いても、復職後本件解雇までのわずか二か月一九日の間の欠勤日が一二日にも及んでおり、勤務した日はわずか二四日であり、勤務日の三分の一を欠勤したことになるのであって、まことに異常な事態というほかない。 欠勤日には、裁判関係で欠勤した日(同年五月二二日、六月四日、七月三日)や身内の病気に関係して欠勤した日(同年六月二五日、三〇日、七月一日、六日)も含まれているが、これらの事情があったからといって労働義務が免除されるものでないことは、右に説示したとおりであり、欠勤を正当化できる事情とはいえない。 原告は、このうちの平成一〇年五月一二日は、本来、健康診断受診日であったと主張するが、事前に受診時間を確かめるなどして確実に診断を受けることができるよう準備しておくべきは当然であり、同日、受診時間が短時間で受診できなかったことは、原告自らに帰責事由があることであって、これが欠勤扱いされることもまた当然のことである。 また、これらの欠勤のなかには、理由も十分説明されないまま直前になって連絡がなされたものも少なくないし(六月二五日、三〇日、七月一日、七月六日)、被告が同年七月三日に指示した証明の提出に対して原告が送信した証明書も極めて不十分なものであり、原告の業務に対する責任感の希薄さは顕著である。 さらに、被告の堂島事業所における業務が、必要人員を確保するという義務を伴うものであり、このために勤務割表が作成されたりしていることは原告も当然認識していたはずであるが、原告が取得した年休のうちには勤務割表作成後の申請によるものが少なからず含まれている。本来、労働者の年休取得が業務に支障を来すのであれば、使用者としては時季変更権を行使すべきであるから、労働者の年休取得を非難し、勤怠の判断材料とすることは許されないところというべきであるが、原告の場合には、その勤務が当てにできないことから、あらかじめ増員した人員配備がなされていたという事情があるのであり、このような背景事情と併せ考えるときは右のような事後申請による年休取得もまた非難に値するというべきである。 しかも、原告の勤務態度は、電話対応に出ようとしないために同僚の顰蹙をかっており、原告は、復職後しばらくは、比較的簡単な業務のみを割り振られるという猶予期間的な措置を受けながら、その間も多数日、年休を取得したりして過ごし、もとの電話による故障受付業務に戻されてもこれに十分対応することができない状況にあったのであり、休職期間中の遅れを取り戻そうとする懸命さや熱意は全く認められず、原告の復職は、却って、周囲の同僚の負担を増大させる結果になっている。 このような原告の勤務状況及び勤務態度からすると、被告が、原告に対し勤怠不良で改善の見込がなく、かつ、業務遂行能力または能率が著しく劣り、上達の見込がないと判断したことももっともというほかなく、したがって、本件解雇は相当というべきである。 |