ID番号 | : | 07440 |
事件名 | : | 遺族補償等不支給処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 京都労基署長・明星自動車事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | タクシー会社Yの営業係長として、タクシー乗務員の管理、業務指導等の業務に一週間ごとの昼夜交代制で従事していたA(当時四三歳 約一〇年前から若年性高血圧症とされ本件発症当時は降圧剤治療を必要とする状態であったが、塩分制限以外は積極的治療を受けていなかった)の妻Xが、Aは午後に出勤して会社の会議室で開催された営業乗務員を対象とする定例研修会に講師として出席した際に、運行体制の変更案の説明中、椅子に座ったまま脳内出血により倒れ、病院に搬送され治療を受けていたが、一週間後に死亡したことから、京都労基署署長Yに対し、労災保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したところ、不支給処分(審査請求、再審査請求で棄却)とされたため、右処分取消しを請求したケースの控訴審で、業務起因性を否定した一審と同様、業務と本件発症との相関関係の存在が一応推認できるが、本件発症前の業務が日常業務と比較して特に過重なものであったこととは認め難く、また研修会における精神的負荷が大きかったとは考え難く、Aの基礎疾患の状態を考慮すると、Aの会社における業務遂行が過重負荷となり、発症の他の原因と比較して相対的に有力な原因として、持病を自然的増悪の程度を超えて著しく増悪させたとまでは認め難いとして、Xの控訴が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法7条1項1号 労働基準法施行規則35条 労働基準法施行規則別表1の2第9号 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等 |
裁判年月日 | : | 1999年7月29日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成9年 (行コ) 46 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例789号67頁 |
審級関係 | : | 一審/07627/京都地/平 9. 8.22/平成6年(行ウ)10号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕 「Aについて、会社の業務が、発症の他の原因と比較して、相対的に有力な原因として持病を自然的増悪の程度を超えて著しく増悪させ、その結果本件発症を招いたといえるかどうかについては、Aの業務の状況、基礎疾患の内容及び程度、生活状況などを総合考慮してなされるべきものと解される〔中略〕 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕 Aの基礎疾患の内容は、前記認定のとおりであるところ、右認定にかかるAの血圧の推移等及び証拠(〈証拠略〉)を総合すると、Aの高血圧の病態は、本件発症当時、高血圧重症度二度の若年性高血圧の状態から、高血圧性臓器障害を伴う重症度三度の高血圧症に進展しており、積極的な降圧剤治療を必要とする状態にあったと認められるところ、前記のとおり、Aは、家庭における食事の塩分制限などには努力していたものの、右疾患に対する積極的な治療は受けておらず、また飲酒喫煙などの生活習慣に意を払っていなかったことが認められる。 4 以上によれば、Aは、本件研修会に臨み、その場で脳内出血を発症したことからすると、業務と本件発症との相関関係の存在を一応推認できるようではあるが、前記のとおり、本件発症前の業務が日常業務と比較して特に過重なものであったとは認め難く、また本件研修会における精神的負荷が大きかったとは考え難いこと、一方Aは、昭和五一年以降若年性高血圧症と診断され、本件発症当時は、降圧剤治療を必要とするほどの状態にあったにもかかわらず、何らの治療を受けていなかったことを考慮すると、Aの会社における業務遂行が過重負荷となり、発症の他の原因と比較して相対的に有力な原因として、持病を自然的増悪の程度を超えて著しく増悪させたとまでは認め難い。 |