全 情 報

ID番号 07448
事件名 従業員地位確認等請求事件、損害賠償請求事件
いわゆる事件名 バイエル薬品事件
争点
事案概要  医薬品等の輸入、販売等を目的とする会社Yの研究開発部門で勤務していた労働者Xが、会社に無断でY会社名で約一五〇〇万円相当の物品を購入して、Yにその代金を支払わせ、また取引先から会社の過払の返済金一〇万円を受領しつつそれを会社に入金しなかったことを理由に、就業規則の規定に基づいて懲戒解雇されたため、Yに対して地位確認及び賃金の支払を求めるとともに、その頃会社に送付された違法文書についてXが実行者ではないかとの査問及び退職勧奨、自宅待機命令を受けたこと及び本件懲戒解雇が不法行為を構成するとして、Yと役員に対し慰謝料の支払を請求した(本訴)のに対し、YがXに対して、Xの不正購入により損害を受けたとしてそのうち一〇〇〇万円の賠償を請求した(反訴)ケースで、本件懲戒解雇は有効であるとしてXの請求が棄却され、YのXに対する損害賠償請求については請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1999年9月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 10124 
平成10年 (ワ) 3081 
裁判結果 一部棄却、一部却下
出典 労経速報1740号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 争点一1に関する前記認定事実によれば、原告の行為は、不正購入の金額が、約一四四〇万円という多額にのぼる上に、長期にわたって反復、継続しており、被告会社の経理の手続の盲点をついて、実際に納品された物品とは全く異なる二〇万円未満の消耗品に分割した内容虚偽の納品書及び請求書を業者に指示して提出させるなど、その方法が計画的かつ巧妙であるから、原告に有利なあらゆる事情を考慮しても、被告会社のした本件懲戒解雇が著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないとはいえず、解雇権の濫用にはあたらない。
 原告は、被告会社に無断で被告会社名で本件物品を購入し、別紙(二)のとおり、被告会社からA社に対して一四四三万三一八四円の支払をなさしめたのであるから、被告には右金額の損害が生じている。本件物品中には、ある程度の汎用性のある機器も含まれるものの、原告が本件物品を被告会社に無断で購入するという不法行為がなければ被告会社は一四四三万三一八四円の支出はしていなかったのであるから、被告会社からA社に対する支払総額である一四四三万三一八四円が被告会社の損害額になるというべきである。被告会社は、右のうちの一〇〇〇万円を一部請求するので、その限度で原告に対する不法行為に基づく損害賠償請求を認容することとする。