ID番号 | : | 07449 |
事件名 | : | 賃金請求上告事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本中央競馬会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 日本中央競馬会Yにおいて、各競馬開催毎に各競馬長の権限によって算定された必要人数に応じて採用され、いわゆる期間の定めのある契約を締結していたX(就業規則上は雇用期間が一競馬開催毎に限定され、次の競馬開催期間との間にYに在籍していない期間が存在していた)が、東京都内の投票所において各競馬場開催時である土、日曜日などに、Yから勤務指定された日のうち少なくとも八割以上について勝馬投票券の販売及び払戻しの業務に従事してきたところ、年次有給休暇を取得した際に、XY間で右東京都内の競馬場が開催されない夏季期間には一か月以上雇用契約が締結されていないことを理由に、Xの雇用形態が年休の成立要件である労働基準法三九条一項の「一年間継続勤務」に該当しないとして欠勤扱いされ、賃金カットを受けたことから、Xの勤務は右要件を充足しているとして、未払賃金の請求をしたケースの上告審で、一審はXの請求を棄却していたが、夏季期間において雇用契約が締結されていない場合が多いといっても、他の競馬場において稼動することにより右夏季期間中でも雇用契約が締結される可能性があり、各競馬場のスケジュールの組方によっては、Xよりも年間勤務日が少ないものでも毎月就労すべき日が存する可能性があることから、夏季期間に一か月以上雇用契約が締結されていない期間があるからといって、本件各雇用契約が実態として同一性がないと判断することは相当でないとして、Xの各雇用契約は同一性を維持して継続し、労働基準法三九条一項の「継続勤務」の要件を充足しているとして一審を取り消した原審の判断が相当であるとして、Yの上告が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条1項 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 年休の成立要件 / 継続勤務 |
裁判年月日 | : | 1999年9月30日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (ツ) 51 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例780号80頁 |
審級関係 | : | 控訴審/06465/東京地/平 7. 7.12/平成6年(レ)71号 |
評釈論文 | : | 小畑史子・労働基準53巻1号16~20頁2001年1月 |
判決理由 | : | 〔年休-年休の成立要件-継続勤務〕 二 法三九条一項所定の「一年間継続勤務」とは、雇用契約に基づき労働者が同一使用者の下で一年間被使用者たる地位を継続して保有することを意味するが、同一使用人の下で多数回に分けて雇用契約が締結され、当該雇用契約に基づき労働者が勤務しているような場合においては、右の継続勤務か否かについては、当該雇用契約の期間が形式的に継続しているか否かを判断するのではなく、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るという年次有給休暇の制度趣旨を踏まえ、勤務の実態、当該雇用契約の期間、各雇用契約毎に契約終了させて、新たに雇用契約を締結する形態をとる理由、雇用契約と次に締結される雇用契約との間隔、雇用契約締結の際の採用手続及び有給休暇が付与されている他の労働者との均衡等を総合して、雇用関係が継続しているか否かを実質的に判断すべきである。〔中略〕 〔年休-年休の成立要件-継続勤務〕 原判決は、右の各事実を前提として、被上告人においては、法三九条一項の適用上、少なくとも昭和五六年以降平成三年四月一四日まで実質的に労働者としての勤務関係が継続していると認められるとしたものであるが、被上告人については、夏季七、八月は東京及び中山競馬が開催されないため、その間雇用契約が締結されていない場合が多いといっても、福島、新潟競馬において稼働することにより右夏季の期間中でも雇用契約が締結される可能性があり、また、各競馬場の開催日の年間スケジュールの組み方によっては、被上告人より年間の勤務数が少ない者でも毎月就労すべき日が存する可能性があることになるのであるから、夏季期間に一月以上雇用契約が締結されていない期間があるからといって、本件各雇用契約が実態として同一性がないと判断することは相当ではなく、前記認定の事実及び原判決掲記の証拠によれば、上告人と被上告人間において、昭和五六年以降平成三年四月一四日までの間実態として各雇用関係が同一性を維持して継続していたもの(ママ)した原審の判断は正当として是認することができる。 |